稀勢の里がなる前に…

 定年延長が若手の不満につながるのは、「年寄株問題」が絡むからだ。

 引退した力士が親方として協会に残るには、105しかない「年寄株」を襲名する必要があるが、慢性的な不足状態にある。その原因だと批判されるのが、65歳の定年後に年寄株を襲名したまま70歳まで参与として残れる再雇用制度だ。「70歳定年・75歳再雇用」となればさらに株が足りなくなる。

 実際、ある若手親方は「70歳定年なんて定年間近の人以外は反対でしょう。今でも実績のある関取が協会に残れず困っている。強行すれば八角体制にとって命取りになりかねない」と“クーデター”の可能性を示唆した。協会関係者が言う。

「来年の理事選に向けて八角理事長が固められているのは、自身と出羽海一門の理事3人の4票とされる。理事長は理事10人の互選。それだけでは当確ラインに届かない」

 注目されるのは、もうひとつの大派閥である二所ノ関一門の動きだ。協会の裏方のひとりが言う。

「二所ノ関一門のバックには、昨年退職した実力者である前・尾車親方の元大関・琴風さんがいて、その古巣である部屋の佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若、57)が理事長候補になる。現在、協会ナンバー3の広報部長と総合企画部長を兼任しているが、これも琴風さんの後押しがあってのこと」

 同一門では、大の里が8年ぶりの日本出身横綱となりフィーバーを巻き起こしたことも大きい。

「大の里の師匠の二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里、38)が将来の理事長候補となった。まだ若いので、まずは副理事を経験してから理事に昇格し、世代交代を進める。北の湖さんは42歳で理事になり、48歳で理事長になった。中継ぎとしてちょうどいい年代に、佐渡ヶ嶽親方がいるのです」(同前)

 時津風一門の2票は二所ノ関一門につくとされ、そうなると“基礎票”は八角理事長サイドと同数。

「カギを握る残りの理事は、二所ノ関一門ながら八角体制下で審判部長に取り立てられた高田川親方(元関脇・安芸乃島、58)、そして伊勢ヶ濱一門の浅香山親方(元大関・魁皇、52)。浅香山親方は同じ一門の白鵬の問題で矢面に立たされ、理事長と少し距離ができたとされます」(同前)

 現執行部体制の継続か、世代交代か──大きな路線対立につながる「70歳定年」の導入やそれに対する反発について協会に問うたが、「お答えすることはありません」(広報部)とするのみ。

 年寄株をめぐる問題では、とりわけ激しい内紛が起きる。1996年には当時の境川理事長(元横綱・佐田の山)が売買禁止といった改革私案を出したところ、親方衆が猛反発。

「私案は取り下げられ、2年後の理事選は“反境川”の急先鋒として当時の間垣親方(元横綱・二代目若乃花)と高田川親方(元大関・前の山)が一門の調整を拒んで出馬した。票の争奪戦で当選できなくなった陣幕親方(元横綱・北の富士)は嫌気がさして協会を退職。境川理事長は4選を断念しました」(ベテラン記者)

 今回もまた、内紛の歴史が繰り返されるのか。

※週刊ポスト2025年7月11日号

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