万引きで逮捕された米田哲也氏(87)
歴代2位のプロ通算350勝、19年連続2ケタ勝利といった数々の大記録を持つ元阪急などの米田哲也氏(87)が、今年3月にスーパーで「缶チューハイ2本」を万引きした事件は衝撃をもって報じられた。球界の“レジェンド”が一体、なぜ──事件後、初めて独占取材に応じた米田氏は、思いがけない言葉を次々と口にした。【全3回の第1回】
右手に杖を持ち、ゆっくりとした歩調で米田氏は待ち合わせ場所の飲食店に現われた。黒のジャケットを羽織り、肩には革製のセカンドバッグ。そして名球会の紺色のキャップをかぶっていた。
「世間を騒がせて申し訳ないと思っている」
開口一番、そう言って唇を噛んだ米田氏は「捕まったのは事実。ただ、こんなにあることないこと書かれるとは思っていなかった……」と続けた。
兵庫県尼崎市のスーパーで、店長の通報により駆け付けた警察官に米田氏が逮捕されたのは、3月25日のこと。往年の大投手が万引きしたのは350mlの缶チューハイ2本で、販売価格にして303円の品だった。
その後、米田氏は窃盗罪で略式起訴され、尼崎簡裁が罰金20万円の略式命令を出した。メディアは事件を大きく報じたが、事件後に本人が口を開く機会はこれまでなかった。
米田氏の自宅は尼崎市内にある築50年の木造2階建てのアパート。記者が6月下旬に訪ね、携帯電話に着信を残したところ折り返しがあり、対面での取材となった──。
「買い物でお金が足りなくなり、(缶チューハイを)棚に返せばよかったんだけど、そのまま(店を)出ちゃった。店の外で、店長に声を掛けられた」
米田氏は、淡々と当日の出来事を話し始めた。