野球殿堂入り祝福される米田氏(左は稲尾和久氏、右は金田正一氏)
「スーパーが朝9時に開くので、歩いて15分ほどかけて店に行った。家内は病院に行っていたのでボクひとり。食料品とかの買い物をして財布のなかを見ると、1000円ちょっとしかない。果物やつまみを買って、ちょうど缶チューハイ分が足りない。飲みたいほうに(気持ちが)いって、(棚に)返せなかった。それで缶チューハイと果物をポケットに入れたんよ」
万引きの事実関係は認めるが、事件後の報道には言い分もあるようだ。
「(現場で)声を荒らげて杖で殴りかかろうとしたとか書かれたが、全くのデタラメ。そんなことするはずがないでしょう。それぐらいの常識はありますよ。ボクのほうが首根っこを掴まれて身動きできなかったんだから。
家内が報道を見て、好き勝手に書いていると言っていた。ボクは“そんなもん無視したらええ”と言うてました」
350勝投手としてのプライド、報道への反発や意地もあったのか、米田氏に当時の心境を尋ねると「う~ん」と唸って少し間を空けてから「スリルがあったね」と言い放つ。
「ボクは探偵小説が好きで図書館で借りて読んどるけど、同じやったね。正直なところ、警察に捕まったらどないなるんやろという興味もあった」
この後も、米田氏は節々に真意を測りかねる言葉を口にするのだった。
(第2回に続く)
※週刊ポスト2025年7月18・25日号