【柳家小三治】演芸写真を撮り始めた頃、橘氏が紙焼きの写真を渡すと、小三治は「合格」と声をかけた。晩年は「まくらの小三治」と言われ、橘氏も「超一流エッセイスト」と振り返る

【柳家小三治】演芸写真を撮り始めた頃、橘氏が紙焼きの写真を渡すと、小三治は「合格」と声をかけた。晩年は「まくらの小三治」と言われ、橘氏も「超一流エッセイスト」と振り返る

落語界の「四番・エース」

 今、橘が注目している落語家の一人に春風亭一之輔がいる。

「古典をベースにしながら、あれだけ落語をおもしろくできる師匠はいないんじゃないですかね。師匠の十八番の一つに『粗忽の釘』という演目があるんですけど、夫婦二人でたらいの中に入って行水をしているシーンで、底が抜けて土星みたいになっちゃったというセリフがあるんですが、もとの噺の中には土星なんて言葉はないんですよ。でも、土星って言われた瞬間、映像と直結するじゃないですか。一之輔師匠は現代の言葉を使っても、古典落語のよさは崩さない。伝統と現代が融合した、落語界の『四番・エース』ですよ」

 そして、落語初心者にこう釘を刺す。

「一之輔師匠の落語を聴いて、おもしろくないと思った人がいたら、もしかしたら落語と相性が悪いかもしれない。だって『大谷翔平のすごさがわからない』って言ってる人がいたら、もう野球を観ない方がいいよ、って思うじゃないですか。それと同じことです」

 演芸写真家の道を歩み始めてから30年が経ち、落語を取り巻く環境はすっかり変わった。橘は感慨深げに話す。

「今、何がうれしいって人に相手にしてもらえることですよ。こうやって話も聞いてくれて。昔は出版社に写真を持って行っても『おもしろいね。でもな、写ってるのが落語家だからな……』って言われてましたから」

 ただ、30年経っても変わらないものもある。

「楽屋の中にずっと留まることはしない。楽屋は神聖な場所というか、芸人さんのための場所なので。だから廊下とか隅っこの方とか、とにかく邪魔にならないところで座ってます。それは30年間、変わらないですね」

 橘がこの世界の第一人者になれた理由がわかった気がした。

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【プロフィール】
橘蓮二(たちばな・れんじ)/1961年、埼玉県生まれ。1995年より演芸写真家として活動。2015年より落語会の演出・プロデュースも手がける。活動30周年の集大成となる新刊『演芸写真家』(小社刊)が7月10日発売。

中村計(なかむら・けい)/1973年、千葉県生まれ。『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』『笑い神 M-1、その純情と狂気』『落語の人、春風亭一之輔』など著書多数。

※週刊ポスト2025年7月18・25日号

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