白石隆浩死刑囚
「性的快感が大きくてやめられなかった」
9人の命が奪われたという無惨極まりない結果に比して、「金銭欲や性欲を満たすため」という白石死刑囚の動機の軽さは、理解し難い。そんな彼は、「殺人に至るより前に、女性に対する見方が変わる経験をした」として、スカウトとしての過去を語り始めた。
「犯行期間から遡りますが、人生で価値観が変わるタイミングが夜のスカウトの仕事でした。女に値段をつけて風俗を紹介したり、風俗をやったことない人をソープに落とすようなことを繰り返すうち、女性に対する認識が、愛して大切にしなきゃいけないというものから、性欲を満たし、金を引っ張る存在に変わりました。
夜の仕事を始めてから、大切だと思った女性はいませんでした。正直、可愛いと思っても、風俗で金になるとか、セックスすれば性欲を満たせるというふうにしか思えなくなりました」
女性を“欲望を満たすためのモノ”と見るようになった白石死刑囚。「ゴールというか、定期的に金を引っ張れる相手を見つける、そういう子のところに転がり込む、いわゆる当たり。200万円ぐらい持ってる子を見つけて金奪ったらやめようと思ってました」と語っていたが、そのような都合の良い“ゴール”は存在することなく、殺害を重ね、逮捕に至った。
ゴールに至る前に捕まってしまったら、と考えたことはあったか、とアクリル板の向こうにいる白石死刑囚に尋ねた。
「考えました。定期的にどうなるかと調べてました」
自身の行為が重大な犯罪であるとも認識していた様子を見せる。「3人目、4人目のとき、永山基準を調べてたんですけど……」と、死刑になることも半ば分かっていたようだ。しかし己を過信していたのか、それとも虚勢か、「完全犯罪でいけると思ってました」とも振り返っていた。
「性的快感が大きくてやめられなかったです。だんだんと性的な目的が上がっていった……」
確定から4年後の死刑執行。その日を彼はどう迎えたのか。
(了。前編から読む)
◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)