社会不安の拡大が懸念されている地域も(習近平氏。写真/AFP=時事)
中国では2025年6月、北京や上海を含む12省市で、企業の給与未払いや行政の無作為的な態度に対する抗議活動が21件発生した。広東省、福建省、山東省、陝西省などでは、病院職員や工場労働者によるデモが相次ぎ、社会不安の拡大が懸念されている。
中国では不動産取引の減少や米政権による対米輸出品の関税問題などにより経済状態が悪化しており、労働者への給料未払い問題が多発しているようだ。米政府系報道機関「ラヂオ・フリー・アジア(RFA)」が報じた。
福建省福清市では、香港系企業の織物工場で数百人の女性従業員が、10か月分の給与未払いに抗議。6月中旬には3日間連続でストライキを実施し、「速やかに給与を支払え」とのスローガンを掲げて市政府までデモ行進を行った。これを受けて企業側は1か月分の給与支払いを約束し、事態は一時的に収束した。
同様の抗議活動は、山東省の青島商船所や陝西省西斉新区の物流センター、広東省東莞、中山、佛山、興平の各市の工場や山東省東営市のホテルでも発生。中には3か月以上給与が滞納されているケースもあり、給与未払いは数百人規模に及ぶという。
陝西省渭南市の病院では、医療スタッフがSNS上で「病院は3か月連続で給与を支払っておらず、現在は閉鎖されている」と告発。住民は病院の再開を求めているが、職員は生活が立ち行かず、どうしようもない状況だと訴えている。
背景には、中国経済の低迷がある。デフレや不動産取引不況の影響で、企業の資金繰りが悪化。若年層の失業率も高止まりしており、公務員試験の競争率が過去最高を記録するなど、安定した職を求める動きが強まっている。
さらに、地域によっては法治や言論の自由の欠如が顕著となっており、生活が困窮する市民を中心に不満が蓄積。草の根レベルでの怒りが高まっている。