決勝に進んだ7組のコンビ芸人(番組公式HPより)
漫才とコントの境界線をどうするか
未知数の期待感がある一方で、業界内やお笑いファンの間で不安視されているのは、漫才とコントの境界線。前述したように1本目と2本目にどちらを披露するかは芸人が選べるため、計14本がランダムに放送されていきます。
これについて放送前から「この形式で視聴者は2つの違いを楽しめるのか」「漫才パートとコントパートを分けたほうがわかりやすいのではないか」「審査が混乱するのではないか」などの指摘が散見されました。どちらにも見える“漫才コント”が得意なコンビも多く、「2つの違いやそれぞれの面白さが伝わりにくい」という課題をどう解消するのか。もしそれができなければ「お笑い好きのための特番」、あるいは「大谷翔平の二刀流に乗っかっただけの企画」などとみなされかねないでしょう。
また、「今年の『M-1グランプリ』に懸けている」「今年こそ『キングオブコント』を取りたい」と思っている芸人はそちらに勝負ネタを投入する可能性が高いという指摘もあります。「けっきょく持ちネタの数が多い中堅が有利な大会になりそう」という声もありますが、実際ファイナリストはメジャーなコンビが大半を占めました。
その内訳は7組中5組が『キングオブコント』のファイナリストで、そのうちロングコートダディは『M-1グランプリ』のファイナルにも進出。計5回もファイナルを戦ってきただけに本命とみられるのは当然でしょう。逆にどちらのファイナルにも出場したことがないのはスタミナパンとセルライトスパの2組。「芸歴制限のない賞レースなのに新たなスター発掘の楽しみがなさそう」という指摘がある中、このどちらかが初代王者に輝いたら最大のインパクトになるかもしれません。
お笑いファンの信頼を得たい日テレ
そしてもう1つ、一部のお笑いファンから懐疑的な目で見られているのが、『ダブルインパクト』が日本テレビの制作・放送であること。
日本テレビが手がける『THE W』は2017年のスタートから現在まで「大会コンセプトや審査形式になかなか理解を得られない」「女王がブレイクしない」という状態が続いています。さらに長年放送されている『エンタの神様』も「芸人やネタを消費するような演出が見られる」「芸人へのリスペクトに欠ける」などの指摘があるほか、他局より若手芸人を育成する番組も少ないなど、お笑いファンからの信頼を得られていないところがありました。
今大会に関しても、大事な初回であるにもかかわらず、土日ではなく月曜祝日の放送に留めたことも含め、「芸人ファーストの大会になるのか」という不安の声があがっています。だからこそ、ともに制作する在阪局の読売テレビの存在が鍵を握るのかもしれません。
放送前の段階では、「夏のお笑い賞レースは新鮮で楽しみ」などの肯定派と、「夏は王者を決めるシビアなバトルより、その日のMVPを決めるフェスのようなムードがいい」などの否定派に二分されています。はたして放送後にどんな反響があがり、来年への期待感がふくらむ大会になるのか。番組名通り、視聴率と反響のダブルインパクトが得られることを期待したいところです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。