設立準備を進めていた「うさぎ日本語学校」

 渡辺被告は当時、多数の日本人が出入りする拠点が不自然に見えないようにという目的からか、日本語学校を設立する準備をしていたことも明かされた。その学校の名は「うさぎ日本語学校」。すでに看板は出していたという。名称に込められた理由を“信者”の小島被告はこう説明した。

「渡辺の中で『うさぎ』は“詐欺”をモチーフにした言葉で、本人も気に入っていました」

 この頃には、渡辺被告の知人だったという藤田被告もフィリピンに渡り、リクルーター業務を担っていた。その藤田被告は、構成員による被害金の持ち逃げを防ぐという目的から、独自に「接触部隊」を立ち上げる。リクルーターの報酬は、勧誘したメンバーが“案件”に成功した場合に得られる。しかし日本で被害者から奪った現金を受け子が持ち逃げした場合、その分の金額をリクルーターが補償しなければならないというルールがあった。小島被告によれば、その部隊は、持ち逃げを暴力や恐怖で防止する危険な集団だったようだ。

「部隊のメンバーは日本にいます。まず藤田が(スマホを介して)面接して個人情報を聞き、相手をカフェに呼び出した上で接触部隊と相対して面接させます。その際にスマホの中身も確認し、持ち逃げしないか、他の業者と関わっているかを確認する。持ち逃げすると、その人間を完全に捕まえるところまで実行し、監禁した上で暴力を加え、それを動画で撮影します。僕も動画を見ましたが、ホテルの部屋で体にホチキスを刺し、金のありかや指示役を吐かせる様子が映っていました。こうした動画を次の面接時に応募者に見せる。もし飛んだらこうなるという強迫観念を与えていました」

 藤田被告の立ち上げた接触部隊の行動により、持ち逃げは激減。渡辺被告のグループは日本での特殊詐欺に邁進していた。2019年後半には小島被告はタワマンに住み、月の報酬は約600万円に及ぶこともあったという。グループの“収益”も月2億を超え、渡辺被告が費用を負担し、グループでセブ島への“社員旅行”に出向くなど、栄華を極めていた。

 しかし2019年11月13日。フィリピン当局が廃ホテルの拠点にいたかけ子ら36人を拘束したことで、こうした日々に終止符が打たれることとなる。

後編へ続く

◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)

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