連日多くの客で賑わう
あれから1年━━
7月中旬、取材班は閉店の真相を確かめるために『生香園』本館へ向かった。閉店を知らせる張り紙に、道行く人の中には足を止める人々も。この日は金曜の夕方時ということもあり、店には常連と思しき多くの客で賑わい、店じまいを控えている店とは思えない盛況ぶりだった。店頭に姿を現わした富輝氏に話を聞いた。
──本館が8月末で閉店すると聞きました 。
「実は7~8年前から大家さんとは立ち退きについて話をしていたの。90年前くらいに建てた古いビルで、耐震性の問題もあって危ないから、ビル自体を建て直すことになった。それで本館は閉めることにしたの。俺ももう70歳を超えているし、これから何があるか分からないしね」
──54年間営業していた店ということで感慨深いものがあるのでは? 常連さんも寂しがっている?
「(近隣にある)新館が営業しているから、寂しいなんてこともないよ。新館に従業員も異動するから問題ないよ。歩いて30秒だし。新館は俺のビルだよ。5階建てで、上階は宴会場になってるからね。で、なんの用できたの?」
──たしかに張り紙には《本館の賃貸借契約満了に伴う閉店のお知らせ》とあり、《生香園新館は引き続き営業してまいります》と書かれている。昨年の食品偽装騒動の影響の関連は?
「あの時の騒動は反面教師というか、(店を立て直すうえで)自分にどれだけ力があるのかを試す意味ではいい“チャンス”だと思ったの。これでダメになるんだったら俺の力がないんだと。
でも基本的には影響はなかったよ。54年もここで店をやってるからね。見てみなよ、このTシャツ。(今年で)75歳になろうというのに、Tシャツ姿で朝から晩まで仕事してるんだよ。一番言いたいのは、俺はいい加減な人間じゃないんだよ」
──今後、テレビに復帰は? 閉店について取材は?
「要請がなければ出られないでしょ。料理ブームも去って、番組も少なくなったし……。視聴率が取れないとウチなんかに取材になんか来ないよ!」
『本館』閉店で気落ちしているかと思いきや、以前と変わらぬ富輝氏だった。