夫婦役の櫻井翔と比嘉愛未(番組公式HPより)
笑って見られる“ネタドラマ”を追求
これまで酷評を受けながらもファン層を下の年代に拡大しているもう1つの理由は、刑事とテロリストのシリアスな攻防戦ながら、どこか気楽に見られること。その背景には良い意味で「“ネタドラマ”として楽しむ」という見方が定着したことがあります。
爆破などのCGはあえて作り込まないレベルに留めているように見えますし、主人公・武蔵三郎の過剰なまでの不死身さ、絶体絶命からの物理的に不可能な救出劇など、毎週ツッコミを誘う要素が満載。今作でも第1話から東京都知事選に出馬する「妖」のリーダー・般若が選挙特番に出演するためテレビ局に面をかぶったまま入っていくシーンに「病院も空港もやられているのに、このお面はテロリストで占拠のフラグと気づかないのか」などのツッコミが続出していました。
同シリーズには視聴者が「それはアリなのか」と笑いながら見てもいいようなムードがあり、「主人公が死なない」という安心感も含めて、子どもたちが「怖いから見ていられない」という声があがりづらい作品に仕上げています。
それ以外でも、顔出ししている武装集団以外の登場人物に内通者がいるのではないか。あの思わせぶりな表情には何らかの意味があるのではないか。これらの子どもも気づきやすい伏線が散りばめられていることも楽しみの1つでしょう。
また、「嘘だろ」の決めゼリフを多用したり、主演の櫻井翔さんにちなんだ嵐にまつわる小ネタを散りばめたりなど、細部にわたる“ネタドラマ”としての密度は確実に増しているところに確信的なスタンスを感じさせられます。
“子ども向け考察ドラマ”を確立
クオリティーファーストにこだわらず、あえてチープに、あえてバカバカしく見えることをいとわない。適度な考察要素を入れ、ツッコミを入れる楽しさ、子どもが見られる安心感をにじませた作風は唯一無二であり、その徹底ぶりは他のドラマにはない魅力でしょう。
テレビ業界でいうところの“C層(チャイルド・4~12歳)とT層(ティーンエイジ・13~19歳)に向けた考察ドラマ”という新しいジャンルを確立したと言っていいのかもしれません。さらに、休日の土曜夜にノリ重視で気楽にドラマを見たいM1層(男性・20~34歳)とF1層(女性・20~34歳)も含めたマーケティングが奏功しています。
しかもそれを3年連続で編成・放送することは容易ではなく、特にキャスティングと脚本作りはもっと称えられていいポイントの1つ。制作サイドのプランニングと実行力の高さ、前作のニーズや反省を踏まえた調整能力の高さなどは、他のドラマにない強みと言っていいでしょう。
ただ、子どものファンが増えているだけに、今後より視聴率を獲得していきたいのなら19時台の放送がベターなのかもしれません。現在、民放ゴールデン・プライム帯の連続ドラマはすべて21時以降の編成だけに難しいところはあるものの、前述した『スケバン刑事』シリーズなどは19時台に放送していただけに、あえてそこに回帰するのも面白いのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。