ドラマ『放送局占拠』が小中高生から支持を集めている(番組公式HPより)
櫻井翔主演で話題を集めるドラマ『放送局占拠』。このドラマが今、小中高生から支持を集めているという。その理由について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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ドラマ『放送局占拠』(日本テレビ系、土曜21時~)が話題を集めています。
同作は2023年の『大病院占拠』、2024年の『新空港占拠』に次ぐ“占拠シリーズ”の第3弾。同シリーズは“占拠”の場所を変えながら、主人公・武蔵三郎(櫻井翔)が面で顔を隠した武装集団と戦う“タイムリミットバトルサスペンス”というコンセプトで放送されています。
特筆すべきは同作が小学生、中学生、高校生などの子どもから支持を集めていること。しかもシリーズを重ねるごとに「友達とこの話で盛り上がっている」「親子で見ている」などの声があがるなどジワジワと子どもたちの支持者が増えているようなのです。夏ドラマの中でTVerのお気に入り登録者数が断トツで、Xの世界トレンド1位を記録したことはその裏付けと言っていいでしょう。
ただ、同シリーズはここまで必ずしも順風満帆だったわけではありません。むしろ「アクションや爆発などのCGがひどい」「謎解きが子どもじみている」などの酷評も多かったにもかかわらずシリーズを重ねてきたという感もあります。
なぜ酷評があるにもかかわらずシリーズを重ね、特に子どもたちの支持を広げているのでしょうか。
武装集団の変遷に見える子ども対応
子どもたちの支持を考えるときに、まず注目したいのは“武装集団”の変遷。
『大病院占拠』の「百鬼夜行」は鬼の面をかぶった武装集団で、青鬼を中心に緑鬼、赤鬼、黒鬼、黄鬼、白鬼、桃鬼、灰鬼、茶鬼、橙鬼、紫鬼と色分けされていました。次に『新空港占拠』の「獣」は十二支の面をかぶった武装集団で、龍、蛇、鶏、虎、猿、馬、牛、犬、鼠、兎、羊、猪。そして今回の『放送局占拠』の「妖」は妖怪の面をかぶった武装集団で、般若、アマビエ、唐傘小僧、化け猫、河童、天狗、がしゃどくろ、座敷童、輪入道が登場しています。
鬼、獣、妖怪……。シリーズを重ねるごとに子どもの好むモチーフに変わっている様子がうかがえますし、面の造形もユニークになり、クオリティが上がっているように見えます。
日ごろドラマ解説の仕事をしていて驚かされるのは、周囲の小中学生から「アマビエ見た?」「傘のお面はどんな妖怪なの?」「般若は怖い妖怪?」などと声をかけられる機会が続いていること。
これは他のドラマにはない現象ですが、考えてみると面をかぶったキャラクターは、特撮ヒーローの『仮面ライダー』シリーズ、アニメの『ガンダム』シリーズのシャア・アズナブルや『おしりたんてい』のかいとうUなど、時代を問わず子どもに人気がありました。『占拠』シリーズの面も、1985~1986年放送の『スケバン刑事Ⅱ 少女鉄仮面伝説』(フジテレビ系)の鉄仮面を彷彿させられますし、「小学生にもウケる」という日本テレビの戦略性を感じさせられます。
その面をかぶった人物を演じている俳優を当てる楽しみも子どもたちに人気のポイント。検索エンジンに「放送局占拠」と入力すると、予測変換ワードに「予想」が表示されることからわかるように視聴者の楽しみになっています。これまでの演じてきたのが若手の俳優、アイドル、芸人、アーティストが多いことから、若年層の視聴者を意識しているのは間違いないでしょう。
さらに制作サイドはあえてキャストを伏せることで「面の正体予想」を盛り上げつつ、徹底してネタバレを防いでいることも視聴者が安心して楽しめる背景の1つ。撮影現場の台本や楽屋などでも正体が伏せられていて、キャストは常に面をかぶって過ごすなど、エキストラや出入り業者などにすらバレないための努力がうかがえます。
同時に「面の正体予想」を盛り上げる工夫は、「リアルタイムで見てもらい、SNSにコメントを書いて盛り上がってもらおう」という視聴率対策であり、日本テレビのドラマらしい抜け目なさを感じさせられます。