ロゴがあった当時(協会のSNSより)
「第三者調査」も秘密裏に実施していた
透明化を求めるスポーツ庁やスポンサーの動きに対し、日本体操協会は、一貫して「第三者調査」に否定的な態度を貫いてきた。が、ここにきて変化の兆しもある。
そもそもハラスメントの実態調査のプロセスを協会の身内で行なうと、加害者に漏れたり、被害者に不利な判断が下されたりする恐れがある。とりわけ処分を判断するうえでの聞き取りは利害関係のない第三者が担わなければ、公平性を保てない。
にもかかわらず協会は、「当事者(選手)から調査の続行を望まない旨の意思が表示されたことから、(中略)当事者の意に反した調査を続行することは妥当でないものと判断しました」(5月15日付回答)と、にべもない対応を続けてきた。
ところが、最近になって改めて協会関係者への取材を進めるうち、「協会は6月上旬に顧問弁護士ではない法律事務所に依頼をするかたちで、『第三者調査』に着手しています。しかも、7月中にその報告を受け取っているはず」という証言を得た。
6月上旬といえば、POLAが“ロゴを外す”という対応をして間もない時期だ。
そもそも調査を始めるなら、その事実をあらかじめ公表するのが普通だが、始まったことさえ沈黙しているということなのか。身内に不都合な結果だった場合、調査そのものを公表しないつもりであるようにさえ見える。
日本体操協会に、第三者調査を行ない、報告を受け取ったのかを問うと、「対応中の案件のため、回答は差し控えさせていただきます」(事務局広報)と、否定はしなかった。POLAにも協会から何らかの報告があったかを問い合わせたが、「日本体操協会側から説明は受けておりません」(ブランドコミュニケーション部)との回答。今後については、「状況が分かり次第、適切な対応をして参ります」(同前)と述べた。
「週刊ポスト」の報道がなかったら、“選手のプライバシー”を口実に疑惑そのものが消されかねず、問題提起した選手を責める向きさえあった。国の至宝である選手たちを守り、再発を防止するためにも早急な公表と協会の隠蔽体質の改善が急務だ。
取材・文/広野真嗣(ノンフィクション作家)
※週刊ポスト2025年8月15・22日号