『岩尾別の母さんルート』があったという(中島拓海さん@TakumiNakashima提供)
「実はこのクマ、少し期間が空いて久々に出産したらしく、それで神経質になっていたのでは、と地元の関係者から聞きました。さらに『岩尾別の母さんルート』なるものがあって、そこにカメラマンが凄い群がっているんです。クマに非常に近い場所まで寄って撮影する人もいました。そういったことも人とクマの距離が近くなって、クマが人を恐れなくなった原因ではないかなと思います」
知床のヒグマは「人を恐れない」
「大人しい」「問題行動はなかった」という認識に対し、警鐘を鳴らすのは、2022年まで知床財団でヒグマ対策の最前線にいた鳥獣コンサルタントの石名坂豪氏だ。
「ネットなどでは、問題行動がなかったヒグマと言われていますが、人に危害を加えなければ問題行動ではないということでは決してないんです。人間の生活圏に降りて来たら生活を脅かす訳ですから、それだけでも十分問題行動です。このヒグマも以前、岩尾別の温泉道路まで何度も降りて来たことがあるので、そういった意味では問題行動を起こしていたんです」
石名坂氏によれば、知床のヒグマの「人を恐れない」状態は異常であり、それは決して自然な姿ではないという。