史上初となる大会期間中の不祥事による出場辞退を発表した会見

史上初となる大会期間中の不祥事による出場辞退を発表した会見

「中井前監督は記者会見を最低限、実施してほしい」

 広陵が今夏の甲子園1回戦勝利後に出場辞退に至ったのは、A君の母親がSNSで問題を書き連ねたことを発端に、さらなる3年生の被害者(B君)の母親がやはりSNSを通じて被害を訴えて大騒動に発展したことが挙げられた。広陵が1回戦の旭川志峯(北北海道)戦に勝利した8月7日の夜には、日本高等学校野球連盟が別事案としてB君側から情報提供があったことを認め、広陵は8月10日になって会見を開き、2回戦以降の出場を辞退すると発表した。

 そして筆者がA君の父親の独占インタビューを行ない、被害者側の訴えの詳細を綴るとともに、今から10年前の部内で暴力の被害などを受けた被害者の声などを報じ、中井監督のハラスメント行為の疑いや責任を問うた。そうした流れのなかで、世論が大きく動いていった。

 一連の問題をめぐっては、被害者側の訴えと、広陵高校側の主張の隔たりが大きい。捜査当局や第三者委員会がどう判断するかを待つ必要がある部分もあるが、それにしても広陵高校側は問題に真摯に向き合ってきたと言えるのだろうか。

 この問題が騒動となって以来、学校からA君の父親に連絡は一度もない。

「私たちは広島県警に被害届を提出していますが、学校の対応として息子の件は“終わったこと”として捉えられているような気がしてなりません。もう二度と、息子やその後に明らかになったB君のような被害者は出てほしくない。そのためにも、監督自ら公の場で再発防止策について提案するような記者会見を最低限、実施してほしいと思います」

 中井監督が“退任”してもなおこうしてA君の父親が口を開くのは、広陵だけの問題で終わらせるのではなく、高校野球が抱える長年の課題を少しでも改善したいという思いがあるからだ。

「広陵で行なわれていたような部員間の暴力行為や、監督・部長らによるパワハラ行為は、少なからず高校野球の世界にはある。監督の退任だけで終わらせるのではなく、文部科学省や日本高野連に動いてもらい高校野球の寮制度の問題点や高校野球のルールを見直すきっかけとなればと思っています」

 広陵高校に、中井監督の復帰の可能性について問うと「一切未定です。事務局⾧の取材対応についてもその趣旨の回答をしたものです」と回答した。事務局長の取材対応とは、前述したように復帰の「可能性はゼロではない」とした発言のことだ。そして県高野連が被害者へのケアを指示した声明文が出たにもかかわらず被害者家族に連絡を入れていないことについては「現在、警察に被害届がなされ、捜査がされておりますので、その捜査の対応を誠実に行っております。また、A君(註・文面では本名)の案件についても第三者委員会による再検証を実施する予定です。事実確認が中立公正に行われるよう、それまでに本校から接触をすることは不適当と考えております」と説明した。

 A君と保護者への謝罪の場を設ける考えがあるかを尋ねると、「前提となる事実関係の再検証と確定なしに説明をすることは適切でないと判断しております」とし、中井哲之氏が出席する記者会見も「予定しておりません」との回答だった。

 中井監督の“無言”の退任では、事件の幕引きとはならないだろう。

■取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)

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