根拠が分からないSNSの大学ランキング投稿によって貶められた(写真提供/イメージマート)
勝手な大学ランキング動画
偽情報の発信と拡散は悪質なことに違いないが、人の生死や、会社の業績に直接影響するような事案ではないため、会社としても「泣き寝入りをするしかない」判断を取らざるを得なかったと海運会社の人事担当者は悔しがる。だが、こうした偽のSNS情報によって、存亡の危機に追い込まれかねない状況にある人もいる。中国地方にある私大の入試担当者が訴える。
「今年のオープンキャンパスに来てくれた高校生数名から、この大学は”Fラン”より下なのか?と直接聞かれ、その際、あるSNSの投稿を見せてくれました。様々な大学をランキングにして紹介する投稿の中で、本学がいわゆる”Fラン”以下の大学であり、そこに在籍する学生は”標準以下”などと記されていて、思わず顔が引きつりました」(私大入試担当者)
大学の偏差値は40台半ばから50台前半とされ、世間的にみると難関大学という扱いではない。しかし、特定業種に特化した学部・学科の伝統があり、特に地元では就職率も高く”Fラン”扱いされる謂れはない。だが、投稿についたコメントは「こんな大学行く意味がない」「金の無駄遣い」さらには「(在籍する)学生は境界知能だ」といった、暴力的なコメントが相次いでいたのだ。
「大学だけでなく、学生まで馬鹿にした許されない投稿ですが、正直言って、そうした投稿に一つ一つ対応していく余裕もありません。問題の投稿は今も残っているようで、受験にも影響が出ると思います。少子化の中、学生が減り続け、私たちも何とかして学生さんに来てもらえるよう努力をしていますが、そうした取り組みを踏み躙られた思いです」(私大入試担当者)
様々な場面で問題視されるようになったSNS上の偽情報や偽投稿。発信者にとっては「閲覧数」さえ上がれば収益も増えるだろうし、情報の真偽などはどうでもいいのかもしれない。だが、実際に偽情報に騙される人が続出し、関係者たちが窮地に追い込まれている。これまで、虚偽の情報発信と流布による騒動に巻き込まれるのは、主に政治家や有名芸能人、大企業とされてきたが、影響はさらに広範囲に及び始めているようだ。ひとつひとつは、直接、関係がない人にとっては小さな事に見えるかもしれない。しかし、無責任な動画がいくつも投稿され、それが拡散されることで様々な場所が不安定化し、深く社会をむしばんでいる。