被告が立てこもった、青木家の邸宅
「部屋に盗聴器やカメラが仕掛けられたと思った」
被告人質問で「黙秘します」と答え続けた青木被告だったが、逮捕当初は取調べに応じており、生い立ちや事件について語った調書が存在する。9月11日の公判では、これらの調書が証拠採用され、法廷で読み上げられた。
調書によれば青木被告は長野県の進学校を卒業後、一浪して都内の大学に合格したが、この進路は本人が希望していたものではなかったという。大学をこき下ろしていた。
「長野市の予備校に通い、受かったのがその大学。レベルが低く、進学したところでメリットを感じず、入学したことで経歴に傷がつくと思っていた。行きたい気持ちはなかったが、父の希望だったのでその大学に行った」(青木被告の調書。以下同)
曰く“レベルの低い”大学に仕方なく進学したが、青木被告は馴染むことができなかった。その理由を「一番は生徒の質が悪かったから」だと、またもや調書でこき下ろしている。
「付属のどうしようもないバカが他に行くとこなくて入ってくるところ。アルファベットが言えなかったり、九九ができない。私は授業を聞いていれば課題ができたが、他の生徒は授業を理解できなかった」
このように、“ひたすら見下していた”大学の同級生たちから、青木被告は授業中に「ぼっち」「キモい」などと悪口を言われるようになった……というが、この頃から妄想があったことは分かっているので、これも妄想とみてよいだろう。
そんな声を当初は無視していたが、そのうちすべての授業で周囲から悪口を言われるようになり、さらには他学校の生徒も生活する寮においても同じような悪口が聞かれるようになった、と被告の調書は続く。学内だけでの悪口が寮にも広がったことを被告は「学校で悪口を言っていた人がネットで拡散し、それを見て悪口を言っている。ちょうどこの頃彼らがスマホを持ち始めた頃だった」として、“ネットいじめ”により孤立したと推測していた。もちろん、そんな“ネットいじめ”の事実はない。
こうして寮を出てアパート暮らしを始めたものの、以降も悪口が聞こえたことから「部屋に盗聴器やカメラが仕掛けられたと思った」と、“ネットいじめ”が続いていると思い込み続けた。
帰省のために迎えに来た両親に対して、“ネットいじめ”を訴えたことで、アパートの部屋に盗聴器が仕掛けられているか探偵に調査を頼むことになった。当然ながら盗聴器やカメラは見つからない。しかし被告は「仕掛けた奴が、探偵の調査までに僕の部屋に入ってカメラや盗聴器を回収したんだろう」と思っていたようだ。