島が生産している塩は「誠実に品質管理をして作っているため、大量購入でも値引きはしない」といい、生産者の矜持も感じられる。手前から明日葉、ボウフウ、アロニア塩
韓国内のある研究では、類似する事件が本土と離島で発生した場合、離島に関する記事の方が多く配信されているとの指摘もある。アクセス数稼ぎを狙う昨今のYouTuberたちにとって、「奴隷島」は韓国人の離島に対するネガティブな意識を煽る、”いいネタ”だったのかもしれない。
ここは「塩を作るのに特化した島」といっても過言ではない。失礼を承知で言うならば、物見遊山すらも成立しえないほど退屈で、想像をはるかに超える「なにもなさ」を感じたのであった。
ほとんど塩の運搬にしか使われないであろう車道をひとり歩いていた筆者の姿は、住民にとってさぞかし異様に見えただろう。
だが、なにもないからこそ閉鎖性は保たれる。食料や情報の供給を外部に依存する離島の“生存戦略”と、閉鎖性は表裏一体だ。そこに外部の人間の想像が加わると、尾ひれを生む。
“島奴隷”は負の遺産として忘れられるのか、それともまた新たな事件が明るみに出るのか──。急激な社会変容を迫られる中、韓国の離島問題がどのような結末を迎えるのか、注視したい。
(了。初めから読む)
<取材・文/安宿緑>
【プロフィール】
安宿緑/編集者、翻訳者、ライター。メンタルを軸に社会問題を分析するのが趣味。韓国心理学会正会員。