現役時代の江夏豊氏(右)、田淵幸一氏
1985年の日本一との違い
江夏:岡田(彰布)の跡を継いで今年から藤川が監督になって大いに注目されたけど、別に藤川が野球しているわけじゃないし、三原マジックや仰木マジックのような奇想天外な采配をしたわけでもない。最終的にはあの選手層の厚さ。まさに選手さまさまよ。
田淵:試合中に監督が一番しんどいのはピッチャー交代のタイミング。代打なんか、大体判で押したように決まっているもんだしね。
江夏:そういうことを踏まえてもリリーフ陣にきちんと休養を与え、投手陣のやりくりをしっかりしていた。投手出身だけにね。野手出身だと感覚的にわからない部分もあるから、そこはアドバンテージだったんじゃないかな。多少だけどな。
田淵:あと正捕手を坂本(誠志郎)にしたっていうのもポイント。打つほうはちょっと心配だけど、周りが打つもんだから目立たないんだよな。キャッチャーは守りの要だけに8番に固定したオーダーの組み方でもの凄く生きたんじゃないか。
江夏:去年から1番近本(光司)、2番中野(拓夢)の出塁率はいいし、3番森下(翔太)、4番佐藤(輝明)がカチッとはまった。なかでも5年目の佐藤がやっと才能を開花させた感じ。もちろん、彼のポテンシャルを考えたら、蕾がようやく花を開いたに過ぎないんだけど。
田淵:身体じゃなくて頭を使い出した。頭を使って身体に浸透させるやり方を今年は覚えたんじゃないかと思う。何でもかんでも目一杯振ったって飛ぶわけないし、当たらないんだから。内側に来たら引っ張って、外側に来たら球に逆らわずに打つとか、頭で考えながらやってたね。だから今年は変な空振りがなかった。
江夏:今までは3ボール2ストライクになったら「これ、三振だな」と。左投手にスライダーを放らせたらまず空振りだったもんな。まだ粗はあるけど、徐々に実力がついてきたんじゃないかな。
田淵:とにかく、1点台の中継ぎが何人もいたらそりゃ優勝する(笑)。石井(大智)なんか、点を取られないから。先発が「ここまで放れば、後はあいつらがいるから大丈夫だ」っていう安心感のなかで放っているのは大きい。まあ、久々に阪神のローテーション投手の能力の高さ、凄さを見た。
江夏:もともと阪神というチームは投手力に定評があるチームだった。古くは小山(正明)・村山(実)から始まって、村山・江夏と核となるピッチャーが2人いた。2年前も岡田阪神が優勝したけど、今のピッチャー陣のほうが安心して見てられるもんな。メンツは変わってないからそれだけ成長したってこと。
田淵:1985年の優勝はバース、掛布(雅之)、岡田の打線で勝った優勝でインパクトあったけど、翌年から脆かった。2年前は「おい、大丈夫かよ、優勝できるのかよ」ってハラハラしながら見ていたけど、今年、誰もそう思わなかった。もう「(優勝)行きますよね」って余裕で見ていられた。
江夏:やっぱり打線は水物っていうからな。