リーグ制覇の勢いのまま戦いはCSへ
田淵:これからCSが始まるんだけど、豊はこの勢いのままいくと思う?
江夏:短期決戦はいろいろあるからな。
田淵:だよな、一筋縄ではいかんよな。
江夏:どういう勝ち方をしていくのかが見どころ。
田淵:シーズンよりもさらに投手の替え時、使い方が重要になる。短期決戦は本当に難しい。昨年はDeNAが3位から優勝したじゃない。下剋上があるんですよ。
江夏:チームの戦略的には短期決戦はシーズンと違う戦い方が必要となる。ラッキーボーイが必ず出てくるのもあって一気に流れが変わるから、負けていても主導権を渡さないこと。
田淵:まあ、アドバンテージが一つあるからね。
江夏:それは確かに有利やな。
田淵:どっちにしても投手が鍵となる。今、エース級の活躍を見せる才木(浩人)であり、大竹(耕太郎)であり、村上(頌樹)といった主力ピッチャーが早々にノックアウトされた時にはどういう継投をするか。序盤で崩れたケースがあんまりないだけに、そこからの立て直しが藤川監督の技量の見せ所でもある。
江夏:現場のピッチャーとしては特別な調整とかではなく、シーズンと同じく普段通りに投げられるかどうか。短期決戦だからといって変に意識してしまうと大概悪い結果になりがち。特別に何かをやる必要はない。まず短期決戦用のローテーションの意図を把握すること。中継ぎ、リリーフはそれを確認して後はしっかり準備するだけ。
(後編につづく)
【プロフィール】
江夏豊(えなつ・ゆたか)/1948年、兵庫県生まれ。1967年に阪神入団。1968年のシーズン401奪三振は現在も日本記録。オールスターでの9連続奪三振など数々の伝説を持つ。南海、広島、日本ハム、西武を渡り歩いて1984年に引退。通算206勝、193セーブ。
田淵幸一(たぶち・こういち)/1946年、東京都生まれ。法大時代は大学最多本塁打(当時)をマーク。1969年に阪神に入団し、ルーキーイヤーに22本塁打で新人王。1975年には本塁打王を獲得し、現役通算474本塁打。引退後はダイエー監督、阪神コーチなどを歴任した。
取材・構成/松永多佳倫(ノンフィクション作家)
※週刊ポスト2025年10月10日号