1993年に初当選を果たし、支援者らと喜びに浸る高市氏(写真/共同通信社)
「中国は高市氏が大嫌いだ。一気に警戒レベルが上がる。戦争になる日が近くなる。自民党は人材不足で総理にふさわしい者がいないが、とはいえ高市氏は危険だ。総理になったら当然いつもの保守色に戻る。中国を刺激して日本にいいことはない。防衛力の強化は必要不可欠だが、彼女がそれを訴えると反発が大きい。高市氏が言うのと小泉氏が言うのとでは、印象が全然違う。小泉氏の力を評価するわけではないけどね」
別の防衛省関係者も同様に、「高市新総理の誕生は『台湾有事』を誘発する」と不安を口にする。
「今回の総裁選では、総理になりたくて独自色を抑えている様子が目立つが、総理になったらいつもの強気な姿勢に戻るのは目に見えている。戦争が近づくなと思うよ。自衛官の処遇改善などはより進むだろうが、戦争への道も進んでしまう」
永田町関係者もこう危険視している。
「政治家としての能力に期待もできるが、その能力がジャマになる可能性もある。防衛省にとって、一番面倒なのは『防衛フリーク』的な考えを持つ政治家だ。防衛の専門家でもなく、ましてや現場の人間でもない。独自の国家観に基づく理想を追い求めるタイプは弊害が大きい。政治家としての実務能力に欠けていればまだいいが、下手に仕事ができてしまうと非常にまずい。こうした手合いが、『官邸主導』を掲げて自信満々に政策に口出しした結果、実態とのズレに気付かず、現場にしわ寄せがいくという最悪のケースに陥る可能性を感じている」
実務能力に長けた高市氏ならではのリスクともいえるが、では、ライバルである進次郎氏はどうか。高市氏とのデッドヒートを勝ち抜けば、「戦後最年少総理」という栄誉に浴することになるが、若さゆえの経験不足と軽はずみな言動が批判を浴びる場面も少なくない。
防衛政策に通じる高市氏に比べると、存在感で見劣りしそうだが、意外にも前出の防衛省関係者は、「総理にするなら小泉氏が断然いい」と言い切る。
「実力不足じゃないかって? いや、実力不足だからこそやりやすいんだよ。高市氏と違って中国を刺激することもないし、こちらとしても扱いやすい。制服組も内局もうれしいんじゃないか。イケイケドンドンの高市氏より、懐柔しやすい小泉氏がいい。2022年の安保三文書の改定で防衛費は『2027年度までに約43兆円にする』という大枠の方針は決まっている。つまり、防衛費は高市氏でなくても、下がることはない。『台湾有事』を避けながら防衛の抜本的強化を実現するというのが我々にとってのベストシナリオ。そういう意味では、『実力不足』の小泉総理のほうが都合がいい」
「政界の壊し屋」こと小沢一郎氏は、時の海部俊樹首相について「神輿は軽くてパーがいい」と言い放った。自民党幹事長として権勢を振るった小沢氏が「軽量級」の海部氏を揶揄したとされる一言を彷彿とさせる、防衛幹部の言葉である。
制御不能な高市氏か、御しやすい小泉氏か。「防人」たちの思惑も交錯するなか、10月4日の開票が迫る。