2020年6月、4人がクロスボウで撃たれた兵庫県宝塚市の現場付近を調べる捜査員(共同通信)
なぜ凶器にクロスボウを選んだのか
事件の計画は2~3年前から立てた。当初、凶器はボウガンの他に、コンバットナイフも候補に考えていた。所持に資格がいらず、安価で、ネットで買え、刺殺に特化していると考えたためだ。米軍で採用されているナイフを2本買い、本を切り刻むなどした。しかし、ナイフでの犯行には躊躇があった。
後にネットでクロスボウを2本買い、2本とも部屋に置いていた。矢は備え付けのものも含め、16本あった。矢はポケット六法や、叔母宅付近の駐車場のブロック塀で試し撃ちをした。
叔母に関しては、叔母の家でボウガンで撃とうと考えた。10回ほど下見に行き、そのうち5回は実行するつもりだった。
実際にはない書類にハンコをもらうという名目で叔母宅へ行き、玄関で叔母を撃つイメージで下見をした。しかし、実行したあとの光景に耐えられるか自信がなく、一線は越えなかったという。叔母が玄関先で被告人に応対した様子は、叔母の証言を伝えた第一回記事でも伝えた通りだ。この被告人の陳述を、叔母はどのように受け止めるのだろうか。
弟が6月4日に仕事で家を出ることを知って、その日に犯行日を決めた。
事件当日午前5時、1階トイレで祖母が手を洗っていた。祖母はトイレに入るときドアを開けるクセがあった。背後から撃つと、側頭部を貫通し、無言でトイレにもたれかかるようにして死亡した。弟にバレないように死体は部屋に運んでベッドの下に隠し、血はティッシュで拭いた。
弟への犯行のために矢を装填した。トイレか洗面台に行くことは予想できた。午前6時に洗面台へ向かったのを確認すると、その背後から側頭部を撃った。弟は「いたっ」と言い崩れた。左手で矢を抜こうとしていたがいずれ死ぬと思って部屋に戻る。
30分後に弟の様子を見ると、まばたきをしていた。午前8時半ごろに見ると、寝そべるような体勢ながら矢が頭から抜けていた。身体を動かしていたので、もう一度ボウガンを撃つと崩れ落ちた。
その後叔母に「いつ来んねん」と電話して、ボウガンを構えて待っていた。側頭部を狙おうとしたがヘルメットをしていて、結局矢は首のあたりに当たったヘルメットを外させて再度撃とうとしたが、怯える様子から、騒がれては一番優先の計画が実行できなくては困ると思い、「黙っとけ」と伝える。
別居していた母には「学校の書類出すから早よ来い」と呼び寄せた。家に入ってきた母の側頭部に向けて階段から撃つと、崩れ落ちるようにして倒れた。死体はリビングまで引きずっていった。
その後、警察に出頭しようと荷物をまとめていた。叔母が家から出る音がした。その後玄関が騒がしくなり、私が加害者ですと名乗った。
淡々と読み上げられた陳述書の内容。特に家族との不仲や憎悪について伝わる点はあっても、犯行状況については特に感情を読み取ることができず、法廷で底冷える思いだった。
この陳述書を補足する意味合いとして、被告人質問が行われた。