2019年4月「出入国在留管理庁」が設置され地方入国管理局は、地方出入国在留管理局として出入国在留管理庁の地方支分部局となった(写真提供/イメージマート)
「悪い中国人はいるよ、許せないけど、それは日本の制度に問題があったとしか言いようがない。中国人からすれば「愚蠢」(マヌケ)だよ、中国人は国も他人も信用しないからね。でも、そこが日本のいいところだと私は思っているけどね」
確かに、そもそも制度の抜け穴を使えば500万円でその国で起業して医療福祉の恩恵を受けられるというのが国際的にも異常な状態だった。
在日外国人の各種申請を扱う都内の行政書士は「数は少ないが」としてこう話す。
「いまのうちにと駆け込みで起業する外国人、とくに中国人が『間に合うか』と問い合わせの連絡を寄こしてくる。金額もそうだが学歴(の証明)が問題とも。言い方が難しいが中国人の大半は日本で言えば中卒や高卒ばかりだ。日本で起業すれば学歴の低い中国人でもわずかな資本金で起業できて医療福祉の恩恵を受けられた、それは利用する手はないだろう。制度そのものに欠陥があったとしか言えない」
社会保険は危機的な状況にある。健康保険組合の解散が相次ぎ、賃金上昇と保険料率の引き上げでなんとかなっている状態の組合ばかりである。急速な少子高齢化と働き方の多様化が主な原因で外国人の割合などたかが知れている。そればかりが原因ではないがもう余裕がないことは事実、いや、そもそもこんなフリーライドを許すための制度ではない。
現役世代の肥大化するばかりの社会保険料、給与明細にため息ばかりの負担額の中、これまでの日本の社会保険制度に一部の外国人がフリーライドできてしまう「経営・管理ビザ」のような誤った制度は変えようという意見、排外や差別でなく、これもまた声なき声であり当たり前の意見であり、ただそれだけの話である。
もっとも「それだけの話」を放置してきたのはこれまでの日本政府なのだが。
それにしても、仕方がないこととはいえ10月中旬(予定)までの猶予があるとは、つくづく日本は「優しい国」である。
外免切替にしろ、経営・管理ビザにしろ、こうしたこれまでの政府のずさんな対応と厳格化、高市早苗自民党総裁の動向が改めて注目される。
●日野百草(ひの・ひゃくそう)/出版社勤務を経て、内外の社会問題や社会倫理、近現代史や現代文化のルポルタージュを手掛ける。日本ペンクラブ広報委員会委員。