在留資格の要件が変更される予定だ(写真提供/イメージマート)
トランプ政権になってからアメリカの移民取締りや大量の在留資格取り消しが話題になっている。そのうちのひとつ、ジョージア州にある韓国・現代自動車の系列工場で移民局が行った大規模摘発は、適切な労働ビザの発給に時間がかかりすぎることから行われてきた「違法な雇用慣行」が強制捜査の理由だった。そういった対処にくらべると、日本は優しい対処をしていると思う人も多いだろう。だが、その優しすぎる対応を改めるべきだという機運が高まっている。人々の生活と社会の変化を記録する作家の日野百草氏が、目的外利用を防ぐため10月中の省令改正で厳格化される見込みの「経営・管理ビザ」をめぐる当事者たちの本音についてレポートする。
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「子どもの学校が心配です。日本の教育は無償で私立のエリート校だって行けるし子どもの福祉も充実している。次の更新が厳しいと日本にいられなくなる。親戚もみんな日本に来てもいいという話なのに」
コミックやゲームのイラストおよび彩色作業の仲介を手掛ける中国人企業代表が語る。企業、代表と言っても彼一人で同じく中国人の奥さんとの共同経営、日本の地方私立短大に留学経験があるので日本語は流暢だ。
「中国でも仕事はできるけど、こういう仕事だと自由を制限されるし日本のほうが何もかも住心地がいい。新制度がどうなるかわからないけど更新を期待するしかない。外国人からすればお得だったのは事実だし、本当は留学段階から行きたかったアメリカじゃあり得ないからね」
これまで問題ばかりだった日本における外国人の「経営・管理ビザ」がようやく厳格化される。「経営・管理ビザ」とは簡単に言えば日本で「起業」する外国人経営者向けの在留資格である。
500万円の資本金か出資、2人以上の常勤職員のいずれかを満たして日本国内に事業所を置けば最長で5年の在留が認められ、日本の社会保険にも入れて日本人と同様に日本の医療を受けられた。もちろん高額医療費制度も使えるし出産育児一時金50万円だって支払われた。事情によっては事業所があれば日本にいなくても受け取ることができた。
このように、もうすぐ過去形となる話で制度も変わるため細部の条件や審査は措くが、これこそ日本政府がずっと放置してきた「経営・管理ビザ」であった。
それがようやく厳格化される。9月24日までパブリックコメント『外国人起業活動促進事業に関する告示の一部改正(案)に対する意見公募要領』が経済産業省で募集されていたので意見を送った読者もいるかもしれない。
元々は多くの外国人に日本に来て企業してもらい「イノベーション創出」につながればといった趣旨の制度だったが、既報の通り社会保険を使った医療制度や福祉行政のタダ乗りに使われてしまった実態がある。