「父と母はとても仲が良かったんです」と話す祐子さん。写真は元気な頃の両親
父が遺した3000万円が、わずか数年でゼロになった──。原因は、母親がのめり込んだ「がんが治る」と謳うマルチ商法だったという。
夫の死への後悔と病への恐怖につけ込まれ全財産を失った母親と、彼女を救おうとする家族の戦いの日々はあまりに壮絶だ。「マルチ2世」として発信している祐子さんに過去について聞いた。【前後編の前編】
「仲のいい家族だったんです」
──お母さんについて教えてください。
「母は高卒で地元の信用金庫に就職し、60歳過ぎまで働いていました。性格は明るく楽観的で、私ともずっと仲がよかったんです。
ただ、母は3歳のとき実母を結核で亡くしたせいか、健康や病気予防にこだわる人でした。そして他人を疑わないので、言われたことをすぐ信じてしまうんです。私の弟がアトピー性皮膚炎で、周囲に『ステロイドや病院の薬はダメ』と言われたのも影響しています。病院嫌いで、民間の健康法やスピリチュアルなものが好きでした」
──たとえばどんなものに?
「オーラが見えるというイベントに行ったり、60歳の頃は手から波動を出すという健康法にハマり、『20万円払って資格を取った』と言うんです。私は止めたんですが『自分で稼いだお金なんだからいいでしょう』と。
もっとも、母は飽きっぽい性格で、ひとつのものに長くのめり込まなかったので、私も深刻には考えていませんでした」