そのためか帰国後の1991年の九州場所では異変が見られた。東横綱の旭富士が秋場所に続けて初日から休場。ロンドン公演で優勝し、英語でのスピーチまでこなした西の横綱の北勝海は序盤に3敗して中日から休場した。
ロンドン公演を休んだ貴花田は東前頭筆頭で7勝8敗と負け越し、ロンドン公演でPR大使並みの忙しさだった東小結の若花田も7勝8敗と負け越した。西前頭筆頭の曙、東前頭2枚目の水戸泉、東前頭9枚目の舞の海は8勝7敗だった。
「力士たちが現地で仲良くなって白熱した土俵が激減した」(同前)との指摘もあるが、稽古が足りなかったためか8勝7敗、7勝8敗の力士が多く、ひとり気を吐いていたのが西大關の小錦で、13勝2敗で2回目の優勝を果たしている。
「小錦、曙などの米国人の巨漢力士も現地では人気だった。ただ、曙が若花田や舞の海とセットでイベントに駆り出されていたのに対し、254キロの小錦は座って握手するだけであまり疲れなかったのではないか」(前出・相撲ジャーナリスト)
同じ状況で迎える今年の九州場所は、ロンドン巡業を休んだ琴櫻が有利かと思えるが、貴花田の前例もある。いずれにせよ、横綱連覇を狙う大の里、大関昇進がかかる安青錦という現地で引っ張りだこだった2人の土俵に影響が出ないことを願うばかりだ。
※週刊ポスト2025年10月31日号