ドラマに出演する豪華な俳優陣(公式HPより)
囲い込みではなくプロジェクトの成果
草なぎさんはいずれも復讐に燃える男を熱く演じましたが、全3部作の脚本を後藤法子さん、チーフ演出を三宅喜重監督が担当。互いに信頼を寄せ合い、作品を重ねるごとに絆を深めていった様子がうかがえます。
その結果、「カンテレ制作で草なぎ剛主演なら絶対に見る」という声があがるなど、ドラマ好きを中心に両者のタッグが浸透。これはカンテレが「草なぎさんを囲い込んでいる」というより、「草なぎさん主演の3部作を戦略的に企画・制作するプロジェクト」の成果と言っていいのではないでしょうか。
最後にもう1つあげておきたいのは、草なぎさんの主演作に限らずカンテレ制作のドラマが視聴者の信頼をつかんでいること。特にドラマ枠を火曜21時台から月曜22時台に移動させた2021年秋の『アバランチ』以降、『エルピス-希望、あるいは災い-』『春になったら』『アンメット ある脳外科医の日記』『僕達はまだその星の校則を知らない』などの意欲作を連発して「カンテレのドラマは面白い」という評価を固めています。
そんなカンテレ制作のドラマが支持されている最大の理由は、在京キー局の作品とは異なる制作スタンス。テレビのタブーに斬り込んだ『エルピス』を筆頭に、テーマや舞台、キャストやスタッフなどの選択で思い切りがよく、局の事情よりもクオリティを優先させる制作姿勢が支持の理由となっています。
近年はドラマフリークの中でも、「カンテレのドラマは攻めている」「キャスティングにこだわりがある」「フジとカンテレのドラマは別物」という認識が定着しました。在阪局特有の自由さもあって独自のポジションを築き、それが草なぎさんをはじめ俳優の信頼にもつながっているのでしょう。
『いいひと。』から、『僕』シリーズ、『戦争』シリーズなどを経て迎える『終幕のロンド』で草なぎさんとカンテレはどんな作品を見せてくれるのか。業界最高峰かつ唯一無二の絆を誇るだけに、年末の最終話まで期待してよさそうです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。