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秋山仁氏『数学者に「終活」という解はない』インタビュー「自分は死んでも定理は永遠に不滅。真理を追い求める人生ってカッコいいと思わない?」

秋山仁氏が新作について語る(撮影/内海裕之)

〈80歳、マジか!?〉──。それが今月79歳を迎えた数学者、秋山仁氏の率直な感想だという。〈下手の横好きも顧みず、面白そうだと思うことに片っぱしから首を突っ込んでは悪戦苦闘してきた年月だった〉と。

 意外にもその半生は失敗と挫折の連続で、それでも数学だけは解けても解けなくても夢中になれたという著者の、主に40代以降の精神の軌跡が、本書『数学者に「終活」という解はない』には年代順に綴られる。

 実は「数学者の終活本を」と依頼された当初、自身は終活という響きにそれほど興味が持てなかったとか。

「もちろん終活関係の本は、自分でも買ってみたりして、一通り読みましたよ。でも結局は多種多様というか、何事も準備が大事だという人も、みうらじゅんさんのアウト老みたいにエイジングを楽しみたい人も、いろいろいていいんですよね。そして私の場合は自分の好きなことをずーっとやり続けて、できれば人様にも喜んでほしいという、今も昔もそれだけなんです」

 例えば〈人間は夢を持ち、前へ歩き続ける限り、余生はいらない〉(by伊能忠敬)等々、本書では東西古今に亘る先人達の名言や箴言が各段落の見出しに引かれ、第3章「四十にして大いに流離う」、第6章「六十代、世間並みの経験も積む」といった章題と併せて独特のリズムや広がりを生む。

 言葉の主もスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、ルーズベルトにワシントン、ゲーテにオスカー・ワイルド、マーク・トウェイン、桃井かおりやアインシュタインや朝永振一郎と各界に亘り、そのほとんどを著者自身が日々、意識的に記憶してきたというから驚く。

「実はこの依頼と同時期に『時代の証言者』っていう読売新聞の連載(計37回)の話があって、向こうは何年に何をしたかとか、事実中心のインタビュー、こっちは自分がそこで何を感じたかとか、心の動きを描写しようと差別化をした。そのポイント、ポイントに自分の思いを代弁してくれるような言葉を64個ほど、ちりばめてみたわけです。

 名言や箴言というのはある事柄を非常にコンパクトに言い得ていて、いい言葉だな、人生の旅の連れにしたいなと思うと、頭に叩き込むのが習い性になっている。特に好きなのが朝永先生や本田宗一郎、それから山田洋次監督というか寅さんの言葉で、私は寅さん好きで相撲好き、『タモリ倶楽部』好きなので、確かに偏りは多少あると思います(笑)」

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