アマキヒは10月26日の菊花賞に出走予定
1978年に調教助手として競馬界に入り、1989年に調教師免許を取得。以来、アパパネ、アーモンドアイという2頭の牝馬三冠を育てた現役最多勝調教師・国枝栄氏が、2026年2月いっぱいで引退する。国枝調教師が華やかで波乱に満ちた48年の競馬人生を振り返りつつ、サラブレッドという動物の魅力を綴るコラム連載「人間万事塞翁が競馬」から、アパパネとその子供たちについてお届けする。
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私が管理した三冠牝馬2頭を比較することは相手関係もあるのであまり意味はない。あえて言えばアーモンドアイは天皇賞(秋)とジャパンカップを2度ずつ勝っているが、アパパネは牡馬相手の重賞では一度も勝てなかった。
ただ、アーモンドアイは桜花賞以降GIしか使っていないが、アパパネは桜花賞と秋華賞、4歳のヴィクトリアマイルの前にトライアルや前哨戦を使っている。応援してくれたファンには申し訳なかったけれど、前哨戦では負けてしまった。でも本番はしっかり勝っているように、いわゆる「使ってよくなる馬」だった。
休み明けは仕上がるまでちょっと時間がかかったが、言い方を変えれば、タフで使い減りしない丈夫な馬だったということだ。調教後に飼い葉食いが悪くなったり、イライラしたりする牝馬もいるが、彼女の場合はケロッとしていたし、暑さにも強かった。
アーモンドアイは――それも能力のうちなのだが――常に力を出しきるところがあった。トライアルを使えばもっといいパフォーマンスを見せてくれたかもしれないけれど、そこで力を出しきってしまって本番を使えないという恐れもあった。
