奨励会からプロになるまでの熾烈な戦いと苦労の数々について語った
「諦めない気持ちだけは人並み以上」
──何度も浮き沈みを経験されながら800勝も達成されました。
800勝ですが、負けた数は899敗です。これまで800勝をあげた歴代棋士の中で、負け越しているのは私だけですよ(笑)。
──「諦めない気持ちだけは人並み以上だった」と書かれていますね。その辺りが「中年の星」と呼ばれた理由でしょうか。
いやあ、自分では中途半端な才能だったと思っていますよ。もう少し才能があればタイトルをいくつか取れたかもしれないし、逆にまったく才能がなければ、早く見切りをつけて別の道に進めたかもしれない。中途半端に残れてしまったから、転職もできませんでした(笑)。
──とはいえ、ご自身が指すだけでなく、子ども向けの「9マス将棋」の考案など、普及活動にも力を入れられていますね。特に、海外の将棋普及のためによく足を運ばれているとか。どんな国に行かれたのですか?
最初はイギリスから始まり、その後スコットランド、フランス、オランダ、ドイツ、北欧諸国、そして中国や台湾、アメリカ、ブラジル、メキシコなどにも行きました。体力的にはだんだん厳しくなってきましたが、行けるうちに行こうと思って続けています。
──この本には棋士たちのさまざまな人生が詰まっていますが、ご自身の将棋人生を振り返って、どう感じていますか?
結局タイトルは取れませんでしたが、棋士になって良かったと思っています。死ぬ時には、まあ、なかなか面白い人生だったなと思いながら死ねると思いますね(笑)。
(後編了。前編を読む)
構成/真田晴美 写真/五十嵐美弥(小学館)
