クマによる被害が相次いだことを受けて警察庁が初めて開いた研修会で対応を指示する同庁の阿波拓洋生活安全企画課長。2025年10月16日午後、東京都内(時事通信フォト)
駆除したら役所の電話がパンクするほど抗議の電話が来る
明らかに結果として、熊害の数が尋常でなく増え続けている。10月17日には福島県が「異常状態」と発表した。
10月3日 宮城県栗原市でクマに襲われたとみられる女性の遺体を発見、一緒にいたとみられる別の女性も行方不明(10月24日現在)。
10月8日 岩手県北上市でクマに襲われたとみられる男性の遺体を山林で発見。
10月15日 岩手県西磐井郡平泉町で列車がクマと衝突、一時運転見合わせ。
10月16日 福島県喜多方市山都町で男性がクマに襲われ顔面血まみれで重症。
10月18日 群馬県利根郡みなかみ町で犬の散歩中の女性がクマに襲われ頭部から顔面を負傷。
10月20日 秋田県湯沢市の住宅街でクマが暴れ男女4人が重軽傷。
10月20日 岩手県盛岡市本宮の原敬記念館でクマが立てこもり、捕獲。
10月22日 福島県大沼郡会津美里町で男女2人がクマに襲われ首や顔を負傷。
10月24日 秋田県雄勝郡東成瀬村で男女4人がクマに襲われ重軽傷、のち1人死亡。
すべてを書き出すわけにはいかないが、今月の熊害をちょっと調べるだけでもこれだけ出てくる。2025年度の被害者数は全国で108人、死者9人。
本州なのですべてツキノワグマとされるが、自治体だけでなく政府が警戒を呼びかけるほどの事態となってしまった。
それでも、現状の手立ては限られる。同じく岩手県、自治体関係者の男性がこう語る。
「クマの保護の問題もあるし、地域差はありますが猟友会の方々と言ってもすぐに対応できるわけもない。駆除したら役所の電話がパンクするほど愛護の方々からそれこそ、全国から抗議の電話が来る。これが現実です」
実際、7月に北海道松前郡福島町で新聞配達員の男性がヒグマに襲われて殺された事件は、ヒグマを駆除したところ数百件の抗議電話が寄せられた。
