クマ捕獲にも使われる箱罠。クマを殺傷しない方法だが、人的被害を及ぼさない無害なクマも捕獲してしまう問題があると言われている(写真提供/イメージマート)

クマ捕獲にも使われる箱罠。クマを殺傷しない方法だが、人的被害を及ぼさない無害なクマも捕獲してしまう問題があると言われている(写真提供/イメージマート)

「凄いですよ。『人間なんか死んでも構わない』『クマに食べてもらってありがたく思え』って本当に来ます。それは極端な極少数ですけど『クマがかわいそう』『クマは悪くない』は多いですね。いろいろな人がいることは承知ですし言論は自由ですが、自治体として積極的に駆除という方向にはなりづらい」

 これがすべてではないし特殊な例と言いたいところだが、現実にはクマ一頭の駆除で数百件の電話が殺到する。さすがにこれは極端過ぎるし、それこそ2024年12月、クマの駆除に対する抗議電話に怒った佐竹敬久前秋田県知事ではないが「お前(クマの駆除に反対する電話の主)のところに今(クマを)送るから住所を言え」「そんなにね、(クマが)心配だったらお宅に送ります」「こういう方は話してもわからない」「そういうくらい言わないと本当にひどい」と言われても仕方のない状況だ。

「あのときと違い、自治体の判断で住宅街でも撃てるようになりましたが、現実は難しいですね」

 これは改正鳥獣保護管理法で「緊急銃猟」と呼ばれ、9月1日から可能になっているが、熊害は増えるばかりなのに活用されているとは言い難い。

「何かあったらと思うと自治体も猟友会の方々も及び腰ですね。それこそ人にでも(弾が)当たったらと思うとね、クマを撃ったら撃ったでさっき言った通り、全国からの苦情に襲われますから」

大事なのはクマか人間か

 この「緊急銃猟」については冒頭の男性も悲観的だ。彼も80代だが狩猟免許(第一種)は持っている大ベテランである。

「年齢や(銃の)腕がどうこうでなくいまクマを撃てるかはわからんね。さすがに猟友会は引退させてもらったが、ツキノワ倒して1頭数千円ではね、金額の問題じゃないと言われても、こっちだって命があるし、誰がやるかという意見ももっともだ」

 岩手県では一頭あたり8,000円、北海道空知郡浦河町では一頭あたり1万円など各自治体によって金額が異なるが、いずれもクマを相手にするには驚くほど安い。北海道など相手はヒグマでこれである。2024年には北海道空知郡奈井江町(一頭あたり8,500円)に対して、危険なのに「安すぎる」として地元猟友会が出動を断る事態となった。

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