酒はたまに飲むことはあったが、持病があるため控えていた
「弟はChat GPTで『アニメで将来何の仕事ができますか?』と調べることがあったくらい、本当に日本のアニメが好きで、将来はアニメ関係の仕事に就きたかったようです。そのためにも日本語学校で本当に熱心に勉強していました。もちろん学費もかかるので、事件が起こる直前まで船橋駅近くの居酒屋でアルバイトをしていて、4月までは工場でのライン作業の仕事も掛け持ちしていました」(バダルさんの兄)
兄の許可を得て、記者は兄弟の自宅アパートの室内を見せてもらった。まず目についたのは、バダルさんが使用していた10冊以上の日本語教材だ。またバダルさんが学習に使っていたノートには、必死に漢字を覚えようと何度も書いて練習した形跡や、「でんきがついています」「ボタンがはずれています」「車がとまっています」といった日本語の文章が書き残されていた。日本語を一生懸命に勉強していたのだろう。
「来年の4月からは千葉県内のビジネスの専門学校にも入学するつもりで、願書を書く準備もしていたんです。彼は同居している私が頼めば買い物をしてくれたり、掃除してくれたりと、兄の言うことをよく聞いてくれる弟でした。また自分の夢だけではなく、父や母のために母国のネパールで家を建ててあげたいとも言っていた。本当に心優しい弟だったと思います」(同前)
兄弟仲はよく、部屋で2人が音楽を演奏する姿をたびたびTikTokで配信していた。
「私と一緒にライブ配信をしていると、日本国外の女性から『弟さんはどこにいるの?』とか、『弟さんを私にちょうだい!』と冗談で言われるほど、ハンサムで優しい自慢の弟でした。弟が大好きだったギターの音色をもう一度聴きたいです」(同前)
そんな心優しいバダルさんの日常が暗転したのは、工場のバイト先での浅香容疑者との出会いだった。「彼女と別れたい」とつぶやく弟と浅香容疑者との間に、兄は事件前からかすかな異変を感じていたのだという。
(第2回につづく)
