昨年170cmのクマを仕留めたハンター
事故前にあった“前兆”
「ご遺体の胴体部分に大きな損傷があった。損傷が爪なのか噛んだのかまだはっきりとはしませんが、大きな傷がある状態です。顔の損傷は幸い少なくて、そのため親族の方に見てもらって、すぐに佐藤さんだとわかった。
状況からすると、もしかしたら食べるためだったのかもしれませんが、詳しいことはわかりません。死因や死亡推定時刻はまだ捜査中です。これからDNA鑑定などをして調査いたします」
事故が起こる前、こんな“前兆”もあったという。
「10月22日、佐藤さんのご自宅から数百メートルのところで柴犬がクマに殺されるという事案がありました。さらにその2日前には、犬が死んだ隣家で、車が壊されている。通報があった当初は交通事故の可能性も考えましたが、現場に行くと車体にクマの爪痕や足跡がベタベタと残っていたんです。まだ不明ですが、この個体が佐藤さんを襲った可能性もある。警察としましては、付近の警戒を継続していきます」
NEWSポストセブンは市の関係者にも取材。駆除されたクマについてある事実がわかった。
「熊を解体したところ、胃の中がほぼ空っぽだったということでした。よほど食べ物がなかったんでしょうね。うちの市だけではないのですが、今年はどんぐりが全くとれなくて、熊のエサとなるものが山の中にないそうなんです。ですから食べ物を探すため、人里に降りてきているのではないかと思います。これまでも、民家の庭先などで栗の木や柿の木に登るという被害がいくつか報告されていますね」(市関係者)
従来のクマとの“違い”についてもこう言及する。
「“猟犬”というくらいですし、普通はクマって犬を怖がるものなんです。しかしまったくそういう気配がない。そういう意味では異常といえるかもしれません。もう家の中にいようが、外にいようが100パーセント安全とはいえない状況です。市のほうでも、住民への注意喚起を行いつつ、見回りなども行っていきます」(同前)
今年度に入り、岩手県内でクマに襲われて亡くなったとみられるのは計5人。これ以上、被害が拡大しないことを祈るばかりだ。
