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《中村雅俊が語る“俺たちの時代”》松田優作との共演を振り返る「よく説教され、ライブに来ては『おまえ歌をやめろよ』と言われた」

中村雅俊が松田優作との思い出などを振り返る(撮影/塩原 洋)

中村雅俊が松田優作との思い出などを振り返る(撮影/塩原 洋)

 俳優デビューから50年を超えた中村雅俊は、『俺たちの旅』『俺たちの勲章』など主演34本を数える。そんな中村に、作家の松田美智子氏がデビューのきっかけや文学座で一期先輩にもあたる松田優作との思い出について聞いた。【前後編の前編】

主役デビューでミリオンセラー

 中村雅俊は人気商売にありがちな媚を売らない。

 時には不器用にも映る実直なスタンスをデビュー当初から貫いている。

 「これまで色々な役を演ってきたけど、芝居をしていないように見えるのがいい芝居だと思っているんです。俺の場合は、地を出し過ぎるきらいがありますけどね(笑)」

 出身地である宮城県女川町は石巻線の終着駅で、中村が物心ついた頃には過疎化が始まっていた。そんな町に閉塞感を覚えていたせいか、石巻高校に進学した彼の夢はソ連(現ロシア)の外交官になることだったという。

 ソ連に拘ったのは、なぜだったのか。

「五木寛之さんの小説の影響ですね。『さらばモスクワ愚連隊』とか『青年は荒野をめざす』とか、主人公が格好よくてね。ソ連は見知らぬ国だったけど、憧れの国のように思えてきた」

 慶応大学経済学部に合格した彼は、英語で外交官試験を受けるべく、ESS(英会話クラブ)に入った。

「英語を習得しようと思って英語劇のセクションを選んだのが、今日に至るきっかけです」

 ESSの活動の中で、彼は人生に大きな影響を与える女性と出会う。

「英語劇を演出した奈良橋陽子さんに『You have Something』と褒められて、芝居をやろうという気になったんです」

 奈良橋は世界を舞台にして活躍するキャスティングディレクターで、他に監督、演出家、作詞家など幅広い顔を持つ。

 彼女の言葉に感化された中村は、文学座附属演劇研究所の門を叩く。大学4年の春だった。

「研究生に選ばれてから、授業はそっちのけで稽古に通いました」

 この時点で外交官になる夢は雲散霧消し、俳優という未知の荒野をめざすことになった。

「数か月過ぎた頃、『太陽にほえろ!』のプロデューサーの岡田晋吉さんが劇団に来たんです。岡田さんとの縁は、それからずっと続きます」

 そうして、中村が「人生で最もラッキーだった」と振り返る2年間がスタートする。

 大学を卒業した4月に日本テレビの青春学園ドラマシリーズ『われら青春!』でデビューすることが決まったのだ。しかも、主役である。

「このシリーズは主役の教師役が夏木陽介さん、竜雷太さん、浜畑賢吉さん、村野武範さんと続き、俺は5代目です。撮影が始まって間もなく『雅俊、おまえレコード出すことになったから』と言われてね。歴代の主役がレコーディングするのは、番組の慣習だったんです」

 挿入歌の『ふれあい』は126万枚の大ヒットとなり、歌手としても幸運なスタートを切った。

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