主演に起用された沢口靖子(公式HPより)
助演での活躍も期待される理由
また、沢口さんが犯人との格闘シーンや、Vaundyの『怪獣の花唄』をカラオケで歌うシーンなどの意外な姿を見せていることもポイントの1つ。変わらぬ美ぼうも含め、今年60歳という年齢を感じさせない姿に今後の活躍を予感させられます。
あらためて沢口さんの経歴を振り返ると、その顔と名前が知られたのは1985年の朝ドラ『澪つくし』(NHK総合)。それから清純派のイメージで多くの作品に出演したほか、徐々にギャップを生かしたコミカルな役柄を増やし、今でも「タンスにゴン」のCMを覚えている人も多いでしょう。もともとサスペンスもコメディもこなすオールラウンダーだけに、『科捜研の女』がひと区切りついた今、それを再び生かす機会が来たように見えます。
だからこそ業界内で期待されているのは、主演だけでなく助演の出演を増やすこと。たとえば今作では「板谷由夏さんが演じている“日本初の女性総理大臣”を演じる沢口さんも見てみたかった」という声があがっています。
その他の作品でも、『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに-』(カンテレ・フジテレビ系)で風吹ジュンさんが演じている、ヒロインの母で生前整理を依頼する余命3か月の女性。『小さい頃は、神様がいて』(フジテレビ系)で仲間由紀恵さんが演じている、「子どもが20歳になったら離婚する」という夫との約束を信じている女性。『ザ・ロイヤルファミリー』(TBS系)で黒木瞳さんが演じている、裏でいろいろ企んでいる馬主の妻。『ぼくたちん家』(日本テレビ系)で坂井真紀さんが演じている、ゲイの主人公らを見守るアパートの大家。
60歳という年齢を感じさせない沢口さんなら、これらの役柄でも違和感なく演じられるでしょうし、榊マリコにひと区切りついた今こそ、さまざまな姿を見せるチャンスではないでしょうか。
沢口さんはいい意味で「どんな役を演じても沢口靖子という女優を感じられる」「実年齢を意識せずに見られる」という稀有な女優。その大きな存在感をどのように生かしていくのか。沢口さんにとってはもちろん各局の制作サイドにとっても、その選択で視聴者を楽しませてほしいところです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。 
