「大谷がホームランを打つたびに即日その本数×1km走る」というルールを設け、自主的に走り続ける岩田さん
──大の阪神ファンでもある岩田さん。9月7日に、阪神が史上最速でセ・リーグ優勝を決めましたが、ご覧になりましたか?
「それはもちろん。いやあ、激アツでしたね。それでまあまあハシャいで盛り上がって、とても穏やかな気持ちで眠ったんですけど……翌日のオリオールズ戦で、大谷選手が47号+48号のマルチホームランを打つんです。天国から地獄とはまさにこのことですね。ハハ、笑えなかったです。
即日、95kmマラソンですよ。大谷選手って、日本人投手からホームランを打つことが多いんですけど、この日は2本とも菅野(智之)投手から打っていて。『ちょっと待てよ、大谷! 日本人投手なんだから、ちょっとは贔屓してくれよ!』って叫びたかったんですけど、心のどこかでいつかマルチホームランが出るとも思っていたので……まあ、このタイミングで来たかと」
──それまでの1日の最長距離は、6月15日(ジャイアンツ戦)の24号+25号の49kmですね。
「突然の倍距離。残りの打席はもう頭が真っ白で、全然集中してプレーを見られませんでした。頭の中は『本当に完走できるんだろうか』ってことばかりで」
──レギュラーシーズン最大の山場と言っても過言ではないですね。
「だって完走まで16時間かかっているんですよ、16時間。あとで見返したら、まったくエンタメになってないなって感じでしたね。終盤なんか見ている方が心配しちゃうぐらいには顔面蒼白だし、完走後に素麺を一口食べただけでゲロ吐いちゃって。あわや画面に映るところでしたが、カメラマンが機転を利かせて画角をズラしてくれて……よかったです」
──ちなみに、マラソン中は何を考えていたんですか。
「もう“死の世界”にいるみたいな感じでしたね。走る時は基本公園の中なんですけど、感覚的には両脇に墓標が立った暗い道の間を延々走り続けているみたいな。視聴者から応援のスパチャも結構来ていたみたいなんですけど、もう何も見えてないので『ありがとうございます』すら言えなくて。ただただシンドい、シンドい……って(笑)」
──最終的にレギュラーシーズンのホームラン数は55本。てっきり、これで企画完遂とばかり思っていましたが……ポストシーズンもまさかの続行。しかも、ルールを追加されますね。
「もともとkm数引き継ぎで行こうとは決めていたんですよ。ただ、やっぱりレギュラーシーズンとポストシーズンだったら、後者の方が1試合の重みがあるわけじゃないですか。だから、1本打つたびに加算されるkm数を、勝ち上がるごとに増やそうって決めたんです。
ワイルドカードシリーズは、1本ホームランを打つたびに2km、ディビジョンシリーズは1本につき3km、リーグ優勝決定シリーズは×4km、ワールドシリーズは×5km加算することにしました」
──もはや「アンチになろう」というよりも「大谷選手を讃えよう」みたいな企画に変化していませんか……?
「まあまあ、まあまあまあ。趣旨としては……まあまあまあ。一応、リスペクトはあるので」
レギュラーシーズン完走を経て、「加算km数の増加」を決めるという“境地”に至った岩田さん。一方の大谷選手は、10月18日、1試合で3本という今シーズン最多本数のホームランを放つこととなり、結果として岩田さんは合計209kmマラソンに挑むことに──その模様は第2回で詳報する。
