凶行に及んだ野津容疑者
法廷に持ち込まれた事件のクロスボウ
医師への尋問終了後、最後の証拠調べが行われた。長い休憩のあと法廷が開かれると、法廷内の傍聴席に近い場所に、シートがかかった机が置かれていた。
検察官が証拠の要旨を述べ始めるとシートが外された。そこにあったのは、事件に実際に使われたクロスボウと矢であった。
クロスボウは黒く、長さは60cm程度。矢の長さは30cm程度だろうか。矢は弟が死の直前に自ら抜いたものを除き、医師が切断したものだった。実物を前に改めて事件が現実的なものとして感じられた。
判決前の審理の最終日には、被告人に矢で射られ重傷を負いながらも唯一生き残った叔母が、意見陳述を行なった。被害者である叔母が語ったのは、甥である被告人に対する複雑な感情だった。
(後編につづく)
◆取材・文/普通(裁判ライター)
