周囲を白いパーテーションで囲われ、ガランとした更地に…
解体の際には責任者が涙を浮かべてお詫び行脚
当時の状況について地元住民の一人はこう話す。
「最初にマンション建設の話が出た時は正直言って驚きましたが、まちづくり審議会を経て高さの修正もあったので、住民としてもある程度納得していた部分がありました。反対意見はもちろんあったものの、ねじり鉢巻きをしてみんなが反対するような運動はなかった。
当時取材にきたマスコミも、反対する住民運動の絵が撮れないので拍子抜けしていましたよ。解体が決定しても多くの人がよろこんで万歳しているような姿なんてないからね。企業イメージの悪化を懸念して、10億円を天秤にかけて損切りしたってことなんでしょうかね」
突然の方針転換に翻弄されたのは市や住民、現場で建設作業に従事していた関係者だった。市の関係者は困惑気味にこう話す。
「市の条例に違反しているわけでもありませんでしたし、事業者の方から詳しい経緯も説明もなく『中止にします』という報告だけだったので疑問は残りました」
決定を下した事業関係者も複雑な思いを抱えていたようだ。
「解体の際は、『ご迷惑をおかけしました』と建設現場の責任者の方が涙を浮かべながら近隣をお詫びして回っていました。よろこんで住んでもらえると思って作っていた建物を、誰も1度も住むことなく取り壊すわけですから、悔しさもあったんでしょうね」(近所の住民)
更地となったマンション跡地の今後について、積水ハウス側は「今後の活用方法については未定です」(広報室)と話す。「富士見通り」の名にふさわしい施設とはどういったものになるのか、今後の跡地活用にも注目したい。
