川を渡るヒグマ(坪田氏提供)
クマが抱える”ストレス”
「餌が足りていなくて、クマもかなり必死で探している状況だと思います。切実さが昨年と比べると大きく違いがあるのかなと。お腹を空かしていますので、クマにもかなりストレスがかかっていて、人間で言うところのイライラしているような状態になっている可能性があります」
坪田氏は「単に(クマの)攻撃性が上がったわけではない」とも話す。
「攻撃性が増えたわけでもなければ、“精神異常”ということでもない。基本的には餌が足りていなくて、空腹状態なのです。しかし個体差がありますので、イライラ度やストレス値は個体によっても違うと思います。実際に、餌がなく山の中で餓死してしまうクマもいます。なにか食べ物があればクマもしのげるのですが、残念ながら、山の中にクマの食べ物がない状況です。
ハチやアリも食べますが、それではほとんど空腹を満たせない。特に、冬眠前のこの時期の主食はドングリなどの植物。ほかには山ぶどうやマタタビですとか、サルナシなど、そのあたりの果実類も食べる。こういうものがあれば(空腹も)緩和されると思うんですけど。おそらく今年はいずれも量的には多くないんだと思います。
原因としては、すでに申し上げたとおり植物のサイクルなんですが、私は温暖化もなにかしらの影響を及ぼしていると考えます。今年の夏はとても暑かったですからね。しかし、そのへんは植物学者にも聞いてみないとわからないのと、たった1〜2年じゃ結論は出せない。これから先、解明されていくと思います」
同氏はさらにもう一点指摘する。
「加えて、クマの人馴れも進んでいる可能性があります。いわゆる里山から人が撤退し、そこにクマが入り込み、人の居住域に近いところまでクマの生息地が迫ってきています。人と出会う機会が増える一方で、痛い目に遭うことがなければ人を”危険な動物”と認識しなくなる。そうして人馴れが進むわけです」
まもなく年の瀬を迎えるが、これからクマの出没は減るのか。一部では“冬眠しないクマ”に関連した報道もあり、SNSやニュースのコメント欄でも心配する声が聞かれる。
こうした懸念について坪田氏は述べる。
