クマによる被害

クマに襲われた男性。背中にも無数の傷跡が(2023年、秋田県)

冬眠しないクマのメカニズム

「正直、そんなに増えていないと思います。本当にまれに少数のクマが冬眠しないで起きていたり、あるいは冬眠中に一度目覚めて外に出てきてしまうとか、そういう個体が人の目に触れますからニュースなどで目立ちますけれども。それはごくごく少数です。

 そもそも冬眠する理由というのは冬になったら餌がなくなるからです。彼らは進化の中で草食に近い雑食性になってきたので、食事の8〜9割が植物なんですよ。冬になると餌が枯渇するから、冬眠に入ってなるべく動かないでエネルギーを節約する。冬眠する前に沢山食べておいて、蓄えた体脂肪だけで生きるというのが彼らの戦略なんですね。

 動物園などで冬の間も餌を与えていると、クマは冬眠しないんです。ですから、食べ物があると冬眠しない場合もあることはたしかです。どこかに鹿の死骸があったり、人の残飯とかがあれば冬眠しないで餌を漁る可能性はあるでしょう」

 坪田氏曰く、冬眠は「非常にユニークなクマの生理機構」なのだという。昨今のクマ被害に関連づけてさらに続ける。

「基本的には母熊は冬眠しながら出産と保育をします。流石に産み落とす時は起きますけど、ちゃんと後産の処理をしてその後またすぐ冬眠に戻る。子どもだけは起きていて勝手におっぱいを吸っているようなイメージですね。だから秋口に、より深刻に餌を求めているのは妊娠したメスです。出産と哺育のためエネルギーを蓄えなくちゃいけないので、切実なのです」

 近年、人里に近づく“アーバンベア”が急増し、時にはクマが民家にも堂々と現れるようになった。そんななかで我々はどのように生活するべきなのか。

 続く記事では、坪田氏がクマから身を守る対策法や“共生”への課題などについても私見を語っている。

(後編に続く)

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