リクルート社内の“不正”を告発した社員は解雇後、SNS上で誹謗中傷がやまない状況に
日本有数の巨大企業リクルートで、内部告発者への対応のあり方が問われている。社内の“不正”を告発した社員は解雇後、SNS上で誹謗中傷がやまない状況になっていた。当事者への取材によって浮かび上がってきた疑惑とは──。
「まだ、ここにない、出会い。」
そんなブランドメッセージで多様なマッチング事業を行なうリクルート。その中核を担う就活支援でスキャンダルが明るみに出たのは2023年のことだった。
リクルートが運営する、就活に関するオンラインセミナーに同社の社員が学生のフリをして潜り込み、質疑応答の際、「リクルートスーツのシャツの色は?」「お勧めの参考書は?」といった質問を繰り返していたのだ。
「社員は自らを“サクラ”と呼び、上司が指示するケースもありました。同社の就活サイト『リクナビ』などに就活生を誘導する意図もあり、実際にセミナー後に多くの学生が『リクナビ』に登録した際は、『動物園を見事に手懐けていて素晴らしいです』と学生を動物扱いする社内チャットのやり取りがあったことも明らかになりました」(経済部記者)
やらせ行為の蔓延を受けて同社社員のA氏が内部告発して2023年6月に朝日新聞が内情を報じ、リクルートは少なくとも20件のセミナーでのサクラ行為を認めて謝罪した。
だがそれで一件落着とはいかなかった。告発者のA氏に取材すると、騒動後に苦境に立たされたと主張する。
「朝日の報道後、全社員に『個人のSNS発信は控えてください』との要請があり、内部告発者探しが始まりそうな雰囲気でした。私の賞与が減額されたことなどを受け、告発した社員として匿名でXに投稿したら、コンプライアンス室に呼び出されて『このXは君ではないか』と詰問され、その3日後に普通解雇という形で解雇されました」(A氏)
解雇を不服とするA氏は2024年1月、解雇権の濫用に当たるとしてリクルートを提訴したが、今年7月の判決で東京地裁は原告の訴えを退けた。
A氏の代理人である浅川有三弁護士が語る。
「懲罰的な不当解雇ではないかと訴えましたが、一審では、賞与の減額や解雇が内部告発に対する報復措置とは認められませんでした。控訴して、引き続き解雇は不当であると訴える予定です」
ただ、この訴訟とは別に、A氏を苦しめる問題があったという。
《こんなのを人間扱いして人権認めたくない》
《ゴミクズくん》
《リアルな世界では弱者だからネットで手当たり次第、蔑むことでしか喜びを感じれない悲しい化け物》
リクルートを解雇された後、A氏のXはバッシングで溢れかえった。A氏が振り返る。
「『モンスター』『無敵のクズ』『チー牛童貞』(オタクを揶揄するネットスラング)などと人格を否定する言葉も浴びせられました。とくに『元リクルート社員』を名乗るアカウントからは“プライドが高い”“ウソをつく”などと執拗に攻撃され、それに連なる形で無数の誹謗中傷が続いてデマ情報がSNSで拡散されました」
