被害が大きかったビル
「土鍋1個」の被害より怖い「自粛ムード」
八戸市の繁華街。本来ならば忘年会シーズンの熱気で溢れかえるはずの師走の夜に、どこか重苦しい空気が漂っている。取材班が訪れたある和食居酒屋では、40代の店主がため息交じりに電話を見つめていた。
「店の中? 土鍋とグラスが一つずつ割れたぐらいですよ。地震の揺れによる直接的な被害なんて、その程度で済みました。地震があるとやっぱりメディアが大きく報道するでしょう。そうするとキャンセルの電話が凄くて……もう電話を取らないようにしたいぐらいですよ(笑)」
「今回の地震はマグニチュードの大きさの割に、市内の被害は少なかった」と強調する店主だが、彼らを苦しめているのは別のことのようだ。
「年末の書き入れ時を直撃されたのが、とにかく痛手ですね。正直、地震そのものの被害より、その後の『自粛ムード』による経済的なダメージのほうが遥かに大きい。ここは田舎で、漁師さん同士などの横の繋がりが非常に強い地域。仕入れなどでも関わりがあるし、『あそこで誰が飲んでた』なんて噂はすぐに広まってしまう。だから余計に、みんな人の目を気にして外に出なくなるんです」
