優勝したのはニッチェ(THE W公式Xより)
Aブロック、もめんとVS電気ジュースの対戦のことだ。自分が投票した電気ジュースには、「ツッコミが最低でも1.2倍のフレーズを言わなあかん」として、それが”女性芸人はツッコミが下手くそといわれる理由のひとつ”と指摘。女性芸人という括りでのワードは、そんなバイアスが芸人の世界にあることをほのめかす。だがそうなるのは、ツッコミとしてではなく「感情整理せずに、そのまま口に出す」からだと解説。単なるバイアスだけで終わらせずに、きちんとアドバイスもする。
もめんとが笑いを取った場面には「うけすぎ、そこまでおもしろくなかったです」と辛辣なコメントを始めると、司会のフットボールアワー後藤輝基に止められてしまう。すると「本気の審査です。続けていいですか」とネタの組み立てについて批評し、「やりたいことは分かるけど、2人がネタ作りに向き合う時間と脳みそが足りてへん」と酷評。だが「ただ芝居の技術はある」と褒めることも忘れない。
スポーツ競技の解説なら、選手が見せるパフォーマンスにどれだけの技術があるのか、すばらしい点はどこか、身体のどんな使い方がよかったのか、反対に改善した方がよいスキルは何かなどを説明するのが普通だ。番組を見ていた視聴者の中には、彼の酷評に嫌気がさした人もいたかもしれないが、お笑いの技術やスキルを争う競技と考えれば、粗品が番組で行っていたのはお笑いの審査とその解説。これまではそこまで突っ込んで解説する人がいなかっただけだ。
話を振られる回数がどの審査員よりも多かった粗品は、番組制作者側から出場者へのコメントを求められていたという。それに応えて、審査に長く鋭いコメントを連発し、ネタの何を評価し、どう審査するかをわかりやすく示してくれたともいえる。本気の審査はストレスがかかるし、辛辣なコメントは嫌われる。それでもコメントしたのには、彼の中に彼女たちの芸を本気で伸ばしてあげたいという気持ちが強かったからだろう。
お笑い芸人はいま、多くの人が憧れる職業で、目指す人たちが次から次へと出てくる。大勢で競い合う状況のおかげで、ある程度の技術向上は叶えられるだろうが、人が多すぎるゆえに見落とされていることもあるのかもしれない。彼の審査を見ていると、そんな彼ら彼女らを引っ張り、全体としての底上げが必要な時期に差し掛かっているのかもしれないと思う。
