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【書評】津村記久子氏が選ぶ“2026年の潮流を知るための1冊”『陰謀論と排外主義』 愛国や保守の外皮を着て排外主義を持ち出す勢力の膨張

『陰謀論と排外主義~分断社会を読み解く7つの視点~』(黒猫ドラネコ、古谷経衡、山崎リュウキチ、清 義明、藤倉善郎、選挙ウォッチャーちだい、菅野 完・著)

『陰謀論と排外主義~分断社会を読み解く7つの視点~』(黒猫ドラネコ、古谷経衡、山崎リュウキチ、清 義明、藤倉善郎、選挙ウォッチャーちだい、菅野 完・著)

 2026年は60年に一度の丙午。「火のエネルギーが躍動し、飛躍が期待できる年」とも言われるが……。高市発言に端を発する日中の関係悪化、深刻化する少子高齢化、課題山積の移民・難民問題、そして急激に普及する生成AIやSNS上でのフェイクニュース・誹謗中傷問題などなど、解決すべき数多の問題に、私たちはいかに対処すべきか。そのヒントとなる1冊を、本誌書評委員が推挙してくれた。

 作家の津村記久子氏が選んだ「2026年の潮流を知るための“この1冊”」は『陰謀論と排外主義~分断社会を読み解く7つの視点~』(黒猫ドラネコ、古谷経衡、山崎リュウキチ、清 義明、藤倉善郎、選挙ウォッチャーちだい、菅野 完・著/扶桑社新書/1100円)だ。

 * * *
 この時代の陰謀論と排外主義を監視する執筆者たちによる本年のベスト盤のような本。コロナ禍以降、紛争や選挙などあらゆるイシューを呑み込んで膨張し続け、愛国や保守の外皮を着て「日本の/国民のためを想って」と排外主義を持ち出すこの勢力についての情報は、まだ個別の事案として散逸していて全体像が把握しにくいのだけれども、本書を読めば、その願望、ロジック、具体的な行動などがある程度包括的に理解できるようになると思う。今もっとも読まれるべき本だと言い切る。

〈点と点を繋いで「辻褄が合う」となって、確定的事項がないにもかかわらず社会の闇を知った気になって人に自説を押し付けようとする〉という黒猫ドラネコ氏の端的な形容は象徴的だ。

 近代に取り残されながら(古谷氏)、終わりのない「物語」への欲求を抱え(山崎氏)、ウソでもいい「リアル」を信じたいと願う(清氏)彼らは、デモやそこでのスピーチによって行動し主張し(黒猫ドラネコ氏、藤倉氏)、選挙に参加して有権者を、ひいては社会を巻き込んでゆく(選挙ウォッチャーちだい氏)。そして最後の菅野氏の章では「〈終戦〉の受容と〈敗戦〉の否認が同居したままの日本人の戦後」という視点から、彼らが日の丸を振ることについて分析される。

 彼らが金銭的に余裕のない若者であるという従来的な像は否定されつつあるのだけれども、金があってもある種の豊かさを剥ぎ取られた老若男女であることは間違いない。そこに残ったものが、暴言暴力ヘイトも含めた他者への影響力への渇望と、自分にとって都合のいい物語を受け入れる虚像(日の丸も含む)への条件付きの愛にも似た希求だということが知れると暗澹たる気分にはなる。

 それでも本書が発売されることは希望である。正気でいるための手引書として、どうか手に取ってほしい。

※週刊ポスト2026年1月2・9日号

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