題名は「お先にどうぞ」の意。青吾が愛したのはそんな心配りをする女性だった
新年が明けて「今年はたくさん本を読もう」という目標を掲げた人もいるのでは? そんな人におすすめの新刊4冊を紹介します。
『アフター・ユー』一穂ミチ/文藝春秋/1980円
同居の多実が海難事故で行方不明と伝えられる青吾。夫の波留彦について同様の知らせを受ける沙都子。海に沈んだ二人は五島列島の遠鹿島で小型クルーザーに同乗していた。不倫旅行だったのか? 遺された青吾と沙都子は初対面にもかかわらず遠鹿島へ。そこで解凍される家族の秘密や過去の犯罪。弱い青吾と強い沙都子のバディぶりで読ませ、大人のラストも明るい余韻だ。
同居のオッチャンもメロメロ。猫のエスパー的愛情表現に読者もメロメロ
『やっぱり猫 それでも猫』室井滋/中央公論新社/1870円
友人宅を訪れ「わ、狸飼ってるの!?」と驚いたら「猫よ」と憤慨された。猫好きの情熱はもの凄い。室井家に一時は六匹いた毛並み違いの家族達。みんなが長寿を全うしたいま、野良から家猫になった経緯や思い出の数々を綴る。運命の恋人チビ、抱くと瞳を潤ませた“滋命”のコロ。看取りの場面ではこちらまで重症のペットロスに。熟年カップルの鎹が猫というのは真理かも。
2026年の大河ドラマの副読本にどうぞ。豊臣秀長を支えた藤堂高虎の魅力満載
『羽柴秀長と藤堂高虎』黒田基樹/NHK出版新書/1078円
今年の大河ドラマは『豊臣兄弟!』。秀吉の弟である羽柴秀長(小一郎)の視点から、戦国時代と兄の天下統一までを描く。著者は時代考証を担当するが、本書で秀長と並べて藤堂高虎を取り上げるのは、秀長が秀吉の右腕であったように、高虎が秀長の有能な右腕だったため。生まれたとき乳母一人の乳では足りず、成人しては身長190cmあったという高虎に俄然興味がわいてくる。
著者はヒット中の映画『爆弾』の原作者。映画のような本書も疾走感がハンパない
『Q』呉勝浩/小学館文庫/上巻・覚醒前夜869円 下巻・暗夜行路847円
執行猶予中のハチはある日姉のロクから連絡をもらう。「キュウのことで話がある。会って」。睦深(ロク)と亜八(ハチ)は血のつながらない姉妹。二人の弟で天才ダンサーとして世界的に注目され始めたキュウ(Q)を醜聞から守ろうと、姉妹は献身的な愛で奔走する。映像学科出身の著者が脳内上映した映画を自動書記したかのような巨編。この疾走感にあなたはついていけますか?
文/温水ゆかり
※女性セブン2026年1月22日号



