『グレタ・ニンプ』綿矢りさ・著/小学館
【話題の書を読む】『グレタ・ニンプ』綿矢りさ・著/小学館/1870円
『グレタ・ニンプ』をいち早くプルーフで読み終えて「由依ロス」に陥ったという精文館書店中島新町店の書店員・久田かおりさん。作家デビューして25年、魅力的な登場人物を数々著してきた綿矢さんの作品のなかで最もファンキーなキャラクター・由依についてこう語る。
「これを読んで綿矢りさが壊れた!?って一瞬感じるかもしれませんが、実は綿矢小説のなかにはずっと由依の心の奥深くに潜んでいた思いが粛々と出番を待っていたんだと思います。過去作を振り返ってみてそう思いました」
由依は俊貴と結婚。夫婦で不妊治療を続けていたがうまくいかず、二人で生きていくと決めた矢先に妊娠する。すると由依の控えめだった性格が豹変し、しゃべり方や態度が粗暴になり、やがて外見までガラッと変わってしまうのだ。
「妊娠とともにキャラ変(しかも過激に)した由依の、その極端さに思わずのけぞりつつ、『なぜ』彼女がそうなったのかが解かれていくと、多分誰もが彼女と少しずつ同期していく気がします。
ただ、そばにいる夫・俊貴にしてみたら、その落差にとまどいしかなかっただろうけど。でもこの俊貴がすばらしい。由依がぶっとんだ格好としゃべり方になってしまってもそれをまるっと受け止めて、ともに歩いて行こうとする姿、特に両方の親との対決場面は胸アツ!!」
少子化の一途を辿る日本にあって、妊娠や出産は個人の人生ではなく、政策課題として語られることも多い。久田さんはこう続ける。
「妊娠すると誰もが感じる違和感、焦り、戸惑い、といったネガティブな感情を自分への嫌悪に育てないために、妊婦だけでなく男性も女性もすべての人たちに読んでもらいたい一冊です」
※女性セブン2026年2月5日号
