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保険の見直しここがポイント
終身保険、定期保険、医療保険…FPが指南する「保険の見直し」のポイント
 マイホームに次いで「人生で2番目に高い買い物」と言われる生命保険。年輩者向けの商品も続々と登場しているが、人生の備えはどこまで必要なのか。万が一のためとはいえ、「よくわからないから」と加入済みの保険を放置するケースも目立つが、それでは家計を圧迫するばかりだ。 では、見直すべき保険商品とは何か。ファイナンシャルプランナー(FP)の長尾義弘氏はこう指摘する。「保険は“めったに起こらない事態”が発生した際に生じる、大きな経済的損失を補填することが目的です。まずはその目的に適っているかを考えていけばいいでしょう」(長尾氏) そうした視点に基づいて、主な商品の見直しポイントを見ていこう。【終身保険】 いつ死亡しても保険金が受け取れる保障が生涯続くため、保険料は総じて高い。「“葬儀代として200万円程度は用意しておきたい”と考え終身保険に加入する方が少なくありませんが、受け取る保険金よりも支払う保険料のほうが高くつく場合がほとんどです」とFPの横川由理氏は言う。「代表的な商品で試算すると、60歳男性が200万円の終身保険に加入して終身払いを選んだ場合、85歳までの保険料は200万円以上になってしまう。途中で解約しても、解約返戻金はそれまでに払い込んだ保険料の半分以下になることがほとんどです。葬儀代を残すのであれば、保険ではなく貯蓄で備えるのがいい」 金利が高いとして「外貨建て終身保険」を勧められることもあるが、「外貨への両替手数料などが高く、為替変動リスクもあるので、“安心のため”に加入する保険ではない」と横川氏は指摘する。【定期保険】 同じ死亡保障でも、「10年間」「70歳まで」というように、一定期間を保障する「定期保険」は当初の保険料は安いものの、更新のたびに保険料が上がるケースがほとんどだ。長尾氏はこう指摘する。「子育て中など大きな保障が必要となる期間は加入のメリットがありますが、ライフステージ別のリスクに応じて見直しが必要。子供の独立や、配偶者の年金受給開始が解約のタイミングとなります」 定期保険には被保険者の死後、保険金を遺族年金のように毎月受け取る「収入保障保険」などがある。「たとえば『70歳まで毎月15万円』の契約なら、被保険者が60歳で死亡したら10年間、65歳なら5年間、遺族が毎月15万円の保険金が受け取れる。受給総額は被保険者が長生きするほど減りますが、死亡時の経済リスク低減に伴い保障額も減る合理的な保険と言えるでしょう。その分、保険料は定期保険の3分の1ほどで済みます」(長尾氏)【医療保険】 入院日数に応じて給付金や一時金が支払われるが、「基本的に医療費の多くは公的保険でカバーできる」と前出の横川氏は言う。「高額療養費制度により、月収50万円までの人なら、たとえ医療費が100万円かかっても自己負担は9万円弱で済みます。近年は入院日数も減っており、貯蓄があれば高額な医療保険にあえて入る必要はないと言えます」 また、「がん保険」も保障内容を精査したい。「2000年以前に契約した古いがん保険は、通院治療で給付金が出ないケースがある。抗がん剤や放射線治療が対象外のこともあるので、注意が必要です」(横川氏)【介護保険】 公的介護保険で賄えない費用を補うための保険商品も増えつつある。「ただ、若いうちから入る必要性は低く、介護リスクを意識する70歳頃から検討しても良いと思います。高齢になるほど保険料は上がりますが、単体で加入するよりも、医療保険に介護特約を付けたほうが安くなる場合があります」(長尾氏)【養老保険・個人年金保険】 公的年金で不足する老後資金を補う保険には、「個人年金保険」のほか、満期までに死亡しても生きていても保険金が受け取れる「養老保険」がある。80歳まで加入できる商品もあるが、横川氏はこう指摘する。「将来の貯蓄と考え加入する方が多いのですが、現在は低金利で保険料のほうが高くつきます。たとえば60歳男性が10年満期、保険金200万円の養老保険に加入すると、代表的な商品で満期までの保険料は約224万円になってしまいます」(横川氏)※週刊ポスト2022年3月18・25日号
2022.03.15 07:00
週刊ポスト
不安をかきたてるセールストークには要注意(イメージ)
金融庁も保険の“煽り営業”を問題視 「年金なんて…」のセールスは要注意
 マイホームに次いで「人生で2番目に高い買い物」と言われる生命保険。年輩者向けの商品も続々と登場しているが、人生の備えはどこまで必要なのか。「日本人は保険に入りすぎ」と言われる。生命保険文化センターの実態調査(2021年)によれば、約9割(89.8%)の世帯が生命保険に加入し、年間に支払う保険料は平均37.1万円。月に3万円を超え、これを30年間払い続ければ1113万円にのぼる。「人生でマイホームの次に高い買い物」と言われる所以だ。ファイナンシャルプランナー(FP)の長尾義弘氏が指摘する。「コロナ禍で生保各社の対面販売が休止となっていることもあり、新規契約件数は減っているが、ネットでの加入が増えている。健康不安から医療保険が人気ですが、相変わらず多いのが、保険に貯蓄性を求める動き。超低金利時代に保険でお金が増えることはないのに、『年金なんてアテにできないですから』といった不安をかきたてるセールストークに応じてしまう例が目立ちます」 そうした状況もあって金融庁は昨年末、保険営業の際に公的な健康保険や年金制度について顧客への説明を求める指針を打ち出すなど、「煽り営業」に待ったをかけようとしているのだ。 万が一のためとはいえ、「よくわからないから」と加入済みの保険を放置するケースも目立つが、それでは家計を圧迫するばかりだ。では、見直すべき保険商品とは何か。「保険は“めったに起こらない事態”が発生した際に生じる、大きな経済的損失を補填することが目的です。まずはその目的に適っているかを考えていけばいいでしょう」(長尾氏) たとえば、公的年金で不足する老後資金を補う保険には、「個人年金保険」のほか、満期までに死亡しても生きていても保険金が受け取れる「養老保険」がある。80歳まで加入できる商品もあるが、ファイナンシャルプランナーの横川由理氏はこう指摘する。「将来の貯蓄と考え加入する方が多いのですが、現在は低金利で保険料のほうが高くつきます。たとえば60歳男性が10年満期、保険金200万円の養老保険に加入すると、代表的な商品で満期までの保険料は約224万円になってしまいます」 こうした指摘も踏まえて、不必要な保険に入りすぎることのないように、しっかりと見直したい。※週刊ポスト2022年3月18・25日号
2022.03.13 07:00
週刊ポスト
辛島町付近を走る熊本市電の2009年から走る0800形。今後、輸送力を高めるべく3両編成の新型車両の導入が予定されている
地方で浮上するコロナ禍の通勤・通学ラッシュ 鉄道会社の混雑対策は
 首都圏では新型コロナウイルスの感染拡大後、通勤ラッシュの激しさがかつてほどではなくなり、ダイヤ改正のたびに減便や終電繰り上げが話題になっている。一方、そこまで日常生活に大きな変化を強いられなかった地方では、通勤通学時の混雑緩和が再び大きな問題として浮上した。ライターの小川裕夫氏が、広島のJR可部線と熊本市電が行っている朝ラッシュ対策についてレポートする。 * * * 長期化する新型コロナウイルス禍により、鉄道利用者の減少に歯止めがかからない。全国に路線網を有するJR各社は長距離移動が敬遠されているので、売上面で多大な影響を受けている。東京・大阪といった大都市圏の私鉄は、通勤・通学といった底堅い需要がある。それでも観光客需要が消失し、経営は厳しさを増す。 他方、コロナ禍にあっても利用者が増えるなど混雑する路線もある。それらの好調をキープする路線は東京・大阪といった大都市圏の鉄道ではなく、自動車依存の高い地方の路線にもある。 広島県広島市を走るJR可部線は、横川駅―あき亀山駅間を結ぶ約15.6キロメートルの路線だ。可部線の終点は横川駅だが、全列車が広島駅まで乗り入れる。そのため、通勤・通学需要も高い。 可部線は2003年に一部の区間が廃止。しかし、沿線の宅地化が進んでいたこともあり、2017年に河戸帆待川駅とあき亀駅の2駅が延伸する形で復活した。延伸区間は非電化だったので、復活にあたって電化改良にも着手されている。 わずか2駅とはいえ、いったん廃線になった路線が復活したケースはこれまでになく、それだけに可部線の復活は地方の鉄道事業者や住民たちを勇気づける朗報となった。 復活後の可部線は、その後も沿線人口や利用者が増え続けた。そのため、最近では朝ラッシュ時の運行に支障をきたすまでになっている。そうした事情から、JR西日本は今春にダイヤを改正。これまで一部の列車を2~3両編成で運行していたが、朝ラッシュ時はすべて4両編成で運行する。これにより列車一本あたりの輸送力が増え、混雑の緩和が期待されている。 混雑を緩和するには、運転本数を増やすことや車両の大型化による輸送力増強が対策として考えられる選択肢だ。 鉄道事業者にとって、混雑することは経営収支面から喜ばしい話ではある。他方、あまり混雑しすぎても、鉄道会社は問題を改善するように迫られる。コロナ前まで、鉄道事業者はもっぱら求められていたのは、混雑を緩和することだった。 しかし、混雑の緩和と一口に言っても容易ではない。近年、運転士不足が叫ばれて久しいが、運転士はすぐに育成できない。また、輸送力増強のために多くの車両を揃えなければならないが、増備した車両は朝夕の通勤ラッシュのためだけに使用されることになる。昼間帯の混雑率が高くない地方都市の路線において、これらは余剰になってしまう。車両の増備や新造は、莫大な費用が必要になるから簡単に決めることはできない。 そうした事情を抱えるため、これまで鉄道事業者は混雑対策には決して積極的とは言えなかった。利用者が減少しているコロナ禍で、奇しくも鉄道事業者は”密”回避が喫緊の課題になり、それが混雑対策を焦眉の急にさせた。渡り線活用で混雑緩和 コロナ禍でも地方都市は自動車への依存度が高いままだが、県庁所在地の市街地では通勤・通学需要を支えるのは主に鉄道やバスといった公共交通だ。「コロナで観光客需要は大幅に減りましたが、通勤・通学需要は特に変化はありません。熊本市電では、以前から通勤・通学時間帯の混雑が深刻化していました。それらの対策を講じなければなりませんでした」と話すのは熊本市交通局運行管理課の担当者だ。 熊本市電は、熊本駅前(田崎橋)―健軍町(けんぐんまち)のA系統と上熊本―健軍町のB系統の2路線を運行。このうち、辛島町―健軍町間はA・B両系統が重複して走っている。「朝のラッシュ時、東端の始発となる健軍町から多くの利用があります。始発となる健軍町で満員になることもあり途中の電停からでは乗車できない、つまり乗り残しといった事態が起きています。熊本市電では2024年度から大型の新車両を導入する予定にしていますが、それまで混雑を放置できません。その対策として、4月11日からJR豊肥本線との乗り換え需要がある新水前寺駅前―辛島町と神水交差点―辛島町の区間運転を実施することにしました。これにより、ラッシュ時は3分間隔の運行でしたが、2分間隔での運転が可能になります」(同) A・B両系統とも区間運転が実施されるのは朝の7時30分~8時30分までの間で、その時間帯にも当然ながら上熊本や熊本駅前(田崎橋)まで運行する電車もある。 こうした柔軟な対応ができるのは、辛島町・新水前寺駅前・神水交差点に渡り線が設けられているという配線構造によるところが大きい。辛島町・新水前寺駅前・神水交差点の渡り線は、車両故障といった緊急時に使用されるもので普段は使用されないという。今回の区間運転は、渡り線を活用するという発想の転換で混雑緩和へと寄与することになった。  鉄道事業者はコロナ禍が長期化し、設備投資への資金的な余裕はなくなっている。それでも私たちの暮らしを支えるため対策を練っている。鉄道事業者たちは舞台裏で知恵を絞り、少しでも快適な鉄道を目指した奮闘がつづく。
2022.03.12 07:00
NEWSポストセブン
差別表現があった『週刊ダイヤモンド』2022年3月12日号
『週刊ダイヤモンド』が「士農工商・情報・物流」表記で謝罪 何が問題だったのか
『週刊ダイヤモンド』2022年3月7日発売号の特集「物流危機」のなかで、差別表現があったとしてメディア関係者の間で波紋を呼んでいる。 問題の記事は「『士農工商』最下層部門の危機 物流音痴が会社を滅ぼす」という見出しから始まり、冒頭に以下のような表現がある。〈「士農工商・情報・物流」──。かつて、社内において情報部門、物流部門の地位が低いことをこう表現していた。DX(デジタルトランスフォーメーション)が企業の経営戦略において重要なテーマになっている近年、情報部門は格上げされている。しかし、物流部門は今なお、最下層の“日陰者”扱いをされがちだ〉 これについて、部落差別表現にあたるのではないか、との指摘が挙がっている。差別問題の解消に力を注ぐ部落解放同盟中央本部に訊くと、以下のような回答があった。「記事については存じ上げておりませんが、最下層であることを意味する表現で使っているのであれば、問題があります。この件については、昨年6月に改めて『見解』を出しており、そこに次のように書かれています。〈これまでから「士農工商〇〇〇〇」方式の比喩的表現が、しばしば繰り返されてきた。これは「士農工商えた非人」から着想を得たものであり、近世の身分序列を無批判的に援用した、部落差別の合理化につながりかねない認識であることを、あわせて指摘しておきたい〉〈教科書で使われなくなった「士農工商」は部落差別を合理化させる危険性があるので使用を避けること、近世身分制については実在した武士身分、百姓身分、町人身分、被差別身分などの身分呼称を使用すること、何よりも近世社会において被差別身分が存在したことを明確に述べること、さらに被差別身分に対する差別と抵抗の歴史をも説明することなどを、あらためて基本的姿勢として確認しておきたい〉 これを部落解放同盟中央本部の見解とお考え下さい」「士農工商○○」は、これまでにも多くのメディアで問題になってきた差別表現だが、残念ながら同じ問題が繰り返されてきた。部落解放同盟でメディアにおける差別事件に取り組んできた小林健治氏は、『部落解放同盟「糾弾」史』(ちくま新書)において、こう述べている。〈これまで「士農工商○○」という表現に対して抗議された事例は、数十件以上ある。「士農工商・編集者」「士農工商・広告代理店」という表現が圧倒的に多い。 社会的に立場の弱い、疎外されている自己を自嘲的にあらわす「士農工商○○」という比喩は、封建的賤視観念、つまり「部落および部落出身者は蔑視される存在」という世間の差別的社会通念を前提とした表現として、強く抗議されている〉『週刊ダイヤモンド』編集部はこの件について、「ご指摘のところ、差別的表現があったことについては、まずお詫びしなくてはなりません。確認が足らずに掲載されてしまったことは、管理体制が不十分だったと考えています。お詫びして、訂正をいたします。そして、こうしたことを繰り返さないよう注意し、かつ教育も行なっていく所存です」と回答した。
2022.03.09 14:00
NEWSポストセブン
2019年2月、日本商工会議所、東京商工会議所が中小企業経営者向けに開催したパワハラ・セクハラ対策セミナー(時事通信フォト)
「社員をバカにする社長」は日本経済を腐らせる一因なのではないか
 マニュアル製作専門会社のグレイステクノロジー株式会社が、繰り返された粉飾決算のために2月28日で上場廃止となった。それに先だって公表されていた特別調査委員会の調査報告書により、過大な設定予算を達成させるためのパワハラが横行していたことが明るみに出た。これらの問題は2021年に急逝した創業者である元会長が主導していたことも報告書で認定されていた。同社のように、創業社長や会長によってパワハラが常態化する職場は規模の大小を問わず少なくない。俳人で著作家の日野百草氏が、いまだに幅をきかせている経営者、幹部の社員に対するパワハラ、私物化と侮辱についてレポートする。 * * *「クライアントに『うちの使えない連中(社員)を教育してやってください』って、信じられませんよ。うちの会社、ヤバいと思いました」 元ベンチャーIT企業の営業マン(30代)の言葉に筆者は「まだそんな経営者がいるのか」とウンザリした。いま彼は大手モバイルゲームの関連会社に転職したが、そのIT企業の社長は自分の会社の社員をバカにする癖があったという。それも他社に向けて、である。「謙遜や相手企業を持ち上げるためかもしれませんが、逆に印象悪いですよ」 もっともな話で、「では、御社には使えない社員しかいないのですか」と言われかねない。ビジネスの場なので面と向かって言わないにせよ、脳内ではそう思われているかもしれない。実際、社員の教育を満足にしないまま「現場主義」と称して他社との仕事に社員教育を委ねて野に放つ経営者は少なくない。かつて一世を風靡したフリーペーパー発行会社の広告営業がそれだった。それすら迷惑なのに、まるで私物のように社員をクライアントの前で侮辱する経営者や役員、上司がいる。これもまたパワハラ、モラハラの類だろう。「言われるこっちも悲しいですし、やめて欲しいです」 素朴な感情だがまっとうな思いである。仮にバカにしてはいないとしても、社員に対する過小評価や貶めての謙遜、その放言は企業風土を悪化させる。「いまだにいますよね。ああいう経営者とか、幹部とか、なんででしょうね」 もちろん、会社や業界それぞれの問題で、全部に当てはまらないと言われればそれまでだが、筆者はこういう会社、エンタメ業界をはじめ何社も知っている。たとえば、「うちはろくな声優いないですけど、彼女は凄いですよ」 こんなことを言う幹部のいる声優事務所があった。20年以上前の話、幹部といっても小さな事務所で役員もマネージャーも兼ねている、という体だったが、その男は一人を売り込むために事務所の所属声優をバカにした。ありえない感覚で、常識の通用しないその感覚が逆に怖かったことを覚えている。事務所はとっくに潰れ、その「彼女」の表立った仕事歴も2010年前後で途絶えている。別の派遣会社の女性の話、「派遣会社でもそういう営業はいます。その人を売り込みたい一心なんでしょうけど、ちょっとどうかと思います。社長クラスでもいます」 こういった話は別の中小規模の警備会社で聞いたことがある。そこはもっとひどくて「うちには貧乏人しか来ない」と社内に撒き散らす社長がいたという。そのまま受け取るなら社長は「貧乏人のボス」になってしまうが、自分でおかしいと思わないのだろうか。巨大企業でもあるまいし、最終的に採用を決めたのは社長自身のはずだ。また当然ながら、社員(隊員)がどう思うか考えないのだろうか。ここまでくると「モンスター社長」である。俺の会社なんか入ってくるのは、いろいろ落ちた奴で物足りない 10年前、ある新興住宅メーカーの就職面接を受けた男性も苦笑する。「最終(面接)で役員が言うんですよ『うちの営業は入れ替わりが激しくてね、どこにも行けないのが入ったりするんだよ』って。驚きました。くだけた感じでざっくばらんな雰囲気を作りたいのかな、とも思いましたが、そんなこと言われて入社しようと思いますかね。私も深読みして『これは不合格だからわざとなのかな』とも思いましたが、しばらくして採用のメールが来ました。もちろん丁重にお断りしましたが」 これ、古い話だが筆者も経験がある。随分前に潰れた小さな出版社だが「なんでうちなんか受けるんですか、みんな出来損ないで、あなたがつきあうレベルの編集はいませんよ」と社長が言うのだ。もうひとりの編集長と名乗る男性はそれを聞いて笑っている。私も『これは不合格だな、断るための方便だろうな』と思ったが、しばらくして採用通知がポストに入っていた。もちろん、私も丁重にお断りしたが、なぜこんな放言をするのだろう。これについて現在は独立している元アプリ開発会社のプログラマーに聞いた。「そんなのマシですよ、いまはSNSでそれに近いことを撒き散らしてる経営者もいます。中小ベンチャーで『CEO』やら『COO』やら名乗ってる連中ですよ。自分の恥をさらしているとか思わないんですかね」 確かにSNSにはそんな社長や幹部、上司への怨嗟も渦巻いている。もちろん逆もしかりで自分の会社の社員をひたすらベタ褒めの経営者や、それをリスペクトする幸せな従業員もいる。表現は自由だし自分の会社、上下や貴賤の話とは別に社会的責任というほどでもなく、あくまで「オーナーが食ってくため」、という経営方針の小規模なベンチャー企業や老舗の同族中小企業があることは否定しない。それでもわざわざ口にすることもないのに、「うちの社員はバカだから」なんて直球を吐くワンマン経営者はいる。 これまでのヒアリングや筆者経験、また寄せられた情報から抽出したものも含め「自分の社員をバカにする社長」もしくは「自分の会社をバカにする社長」(社長だけでなく経営幹部や上司も)という前世代の遺物がいまだにはびこっていることは事実である。「そんな会社、勝手に潰れればいい」は当然だが、残念ながら残っているどころか上場を果たしていたりもする。もちろんネットを中心に会社の評判自体は悪いまま。こうした会社が日本独特のものか、海外企業にも多いのかはわからないが、大げさでなく日本の企業環境、ひいては回り回って日本の悪しきビジネス文化として経済を蝕み続けているように思う。 昭和の「うちの子はバカで」「うちの子はダメで」と言ったあと「それに比べてお宅のお子さんは」なんて親がデフォだった時代の残滓だろうか、「My Son amazing!」「Daddy Cool!」なんて身内も直球で褒める文化とされる欧米に比べれば謙遜文化の日本、それでもわざわざ他者を貶める必要はないし放言の必要もない。 そこで実際、そういった言動の見受けられた知り合いのプロダクション経営者に話を聞いた。過去形なのは、最近は色んな意味で大人しくなったからである。また旧知の仲であり本旨を伝えやすくするため、本人了承の上、あえてやり取りをくだけた形のままとした。「うーん、若かったからって言い訳はさせてよね。それ前提で話すと、やっぱ俺の会社なんか入ってくるのはさ、他の大手とか有名どころを落ちた奴なんだよ。そりゃそうだよね、待遇だってよくできないし、やりがい搾取と言われても仕方ないからね。そんなところに入ってくるってのは、やっぱ俺からすると物足りない奴ばかりなんだ。でもそんなのでも人手は必要ってところかな」 こういう会社は迷惑だから他人を雇ってほしくないのだが、筆者の知る別の業界新聞(すでに廃刊)社主も「大手を落ちて、中堅落ちて、いろいろ落ちてもマスコミ、ってのしか来ない」とボヤいていた。会社の大小でなく、経営側の人格に尽きる話かもしれないが本当にいるから困る。「俺は国立(大学)出て大手に勤めたあと独立したけど、最初からうちに来るってのは俺に比べるとねえ、という感覚はやっぱりあるよ。ありがたいとは思ってるけど、物足りないのは事実だね」 なるほど、確かに会社は小規模零細であっても成功した社長の多くは大手企業から独立したり、中小企業でもエース級の活躍や実績を残したりの人が多い。小さくとも社員を雇えるだけの企業を興し、それが長く続くならたいした才覚だろう。統計はさまざまだが、会社を立ち上げて5年存続は10%、10年で5%、20年となると1%もない、それどころかわずか3年で約50%が消えるとされている。「その辺の社長さん」もじつは凄いのだ。彼も小さな会社だが配信事業が好調で年商は億、脱サラしたい人にとっては理想かもしれない。ただ、人格と経営がイコールかというとそうでもない。社長業ってほんと孤独だから「うちは少し特殊な仕事だけど、売上のほとんどは俺のコネクションが主だから社員に多くは望まない。手足で動いてくれればいい、その手足すらできない連中、なんだよねえ」 なんだよねえ、と同意を求められても困るし採用したのは自分だろうに。と言うと「そんなんだけどさー」と反省の色はない。「小さな会社で社長の売り上げが大きい会社だと、誰が食わせてやってるんだって経営者は多いよ。実際そうだしね。社員はアシスタントって感じでワンマンになりやすいかもね、アシスタントというより私物かな」 業種によっては社長が仕事をとってきて回す、社長の売り上げがほとんど、という場合もある。デザイン事務所などのクリエイター系、法律や税務、あと個人医院なども形態だけなら(多くはまともなことは当然だが)それに近いだろうか。知り合いの人気歯科医は年中スタッフを募集しているが、それは「使えないから」と辞めさせまくるから。それでも本人の腕で客はつくし仕事がなくなるわけではない。労基もなぜかだんまりだ。また某有名漫画家の事務所は「行ってはいけないアシスタント先」の上位である。しかし事務所の社長でもある彼の才能だけで数十億を売り上げるわけで、アシスタントなんか使い捨てでもネットで告発されても作品のファンが減るわけではないし今や大御所、アシスタントに「才能ないって哀れだよね」と平気で言う。ここまでくると何らかのパーソナリティ面の支障を疑ってしまうが、どの業界にもこうしたワンマン経営者がいる。迷惑な話だが、とくに小さな会社の経営者は王様、稼げていることが前提だが、大企業とは異なる土壌がある。「さすがに俺も年取ったから大人しくしてるけどね。少子化で若い子も減ってるし、20年前みたいなとっかえひっかえはできないからさ。かといっておっさんはいらないし」 自分もおっさんだろと言ったら「そうなんだけどさー」とぼやく。昔から中小企業のオヤジにはこういう人がいた。しかし現代では通用しなくなっている上に、日本全体がかつてほどの経済規模を維持できていない。それでもまだ日本国内には健在だ。「あと孤独ってのもあるね、社長業ってほんと孤独だから。俺はそこまでじゃないけど、見下す相手が欲しくて採用してるんじゃないかって社長もいるし。キミも知ってるだろ」 知っている。詳しくは書かないがその道の大家(たいか)、詳しい人なら誰でも知っている「大先生」だが、彼はあえて「無能」を必ず1名採っていじめている(本人談)。20代の女性スタッフは美人ばかりだが、その他「無能」なおっさんを1名採ってはいじめて辞めさせる。世の中には本当にヤバい人がいて、それが才能だけで稼ぐ大先生やオーナーという名の暴君となり、自分の会社だからと好き勝手する。かつての就職氷河期、某ベンチャー企業にもシゴキを楽しむための軍事訓練ごっこのような採用試験を繰り返した社長がいた(さすがに潰れた)。資本主義、自由主義の国なので個人の勝手と言われればそれまでだが、古い話だけでなく、最近の若手ベンチャーにもこうした経営者が散見されることは危ういと思っている。ちなみに「このハゲぇぇぇぇぇ!」で話題となったが、政治家の事務所も酷いところは本当に酷い。「そんな奴、おっさんから刺されればいいのにね」 笑って話す。「おまいう」案件で自覚なさすぎだが、そんな彼もまた(残念ながら)資産を含め年齢的にも逃げ切りが近く安泰。もうこればかりは、こうした会社の数々に「近づかない」ことが大事としか言いようがない。それでも採用数の限られるエンタメなどはチャンスを求めて人は来る、社長が大きな仕事や有名な作品に関わっていればなおさらだ。 社員を私物化して人格すら否定する、人権を蔑ろにする経営者が当たり前のようにいる。こうした土壌が労働生産性を下げ、30年間賃金の変わらない日本を蝕む企業文化、労働文化の一端であるならば、小さな事例であろうとも声を上げ、日本全体で変えていかなければならない。 社員をバカにする社長――あくまで一例からの提言だが、個々の話にとどまらず、これもまた日本経済を末端から腐らせる一因であり、価値観の変容、アップデートが求められている。【プロフィール】日野百草(ひの・ひゃくそう)日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。社会問題、社会倫理のルポルタージュを手掛ける。
2022.03.06 16:00
NEWSポストセブン
「再成長アドバイザー」に様々な意見が(時事通信フォト)
朝日新聞が「再成長アドバイザー」に任命したのは“70代大物OB”だった
 朝日新聞社内で2月3日、「社長室」から届いたメールに衝撃が走った。2020年度に創業以来最大の最終赤字を計上した朝日は、2021年4月に就任した中村史郎社長のもと、新たな経営体制で「朝日新聞を創り直す」をスローガンに掲げている。 その一環で経営再建への新たな試みとして、社長に対する助言役となる「朝日新聞を創り直すためのアドバイザー」(通称「再成長アドバイザー」)を委嘱するという。社員に宛てたメールには就任する3人について、法政大学経営大学院教授の高田朝子氏、博報堂出身のアートディレクターの森本千絵氏と並んで、テレビ朝日ホールディングス代表取締役社長の吉田慎一氏の名前があったのだ。 朝日新聞デスクが語る。「吉田氏は朝日新聞OBで、福島支局で取材した木村守江・県知事の収賄汚職事件は書籍化され、1978年と1995年にも新聞協会賞を受賞した。主に政治部畑を歩み、ワシントン特派員、東京本社編集局長、常務取締役編集担当と上りつめて2014年にテレビ朝日社長に転じました。朝日を創り直すと言いながら、昔の“朝日の象徴”のような70代OBを助言役に任命するなんてブラックジョークでしかない」 中村社長は「自前主義からの脱却」を具現化するための再成長アドバイザーだとしている。任期は1年で、〈社外からの専門的な知見を経営中枢に届けてもらい、より外に開かれた経営につなげていきたいという狙い〉があるという。 さらに社員に向けて〈「なぜ今さらOBに頼るのか」という疑問があるかもしれません。しかし、本社での経営経験が長い吉田さんから過去の教訓や危機感の共有などについて助言してもらうことには大きな意義があります〉と綴っている。「大先輩への忖度なのかわかりませんが、この会社が変わるつもりはないというのがよくわかります」(前出・デスク) 朝日に選出の理由や報酬などを訊ねると、「吉田慎一様には、これからのメディア企業像についてのアドバイザーを引き受けていただきました。テレビ局役員として、また当社OBとしてのご経験を踏まえ、幅広くご助言いただきます」(広報部)と回答した。 人材選びは保守的なようだ。※週刊ポスト2022年3月11日号
2022.03.02 11:00
週刊ポスト
長嶋修氏
米国株への過信は禁物 没落シナリオに備えておく必要もある
 コロナ・ショック後の株高を背景に、日本では個人投資家が増加している。彼らの投資対象として大人気なのが「米国株」だ。このところ、書店に足を運べば米国株のノウハウ本がズラリと並び、大儲けした個人投資家のインタビューなどでも、米国株投資で短期間のうちに利益を上げた成功譚が多い。さまざまな証券会社の売れ筋投資信託ランキングでは、米国株を投資対象とするものが、決まって上位に来ている。 米国株がこれほど注目されているのは「米国経済は世界一強い」と考える人が多いからだ。実際、米国は目下、世界一の経済大国であり、株式市場の規模も世界一。移民が多いこともあって人口は増加しているが、「人口ボーナス」という言葉があるように、労働人口の増加は経済成長を促進するファクターの一つだ。人口が減少、経済も今一つでジリ貧状態の日本とは違い、明るい要素が多いのはたしかだろう。 米国株全体の方向感を示すNYダウやS&P500などのインデックスは、長期にわたって上昇を続けている。もちろん、古くは20世紀前半、世界大恐慌の引き金を引いたウォール街大暴落から、近年のリーマン・ショック、コロナ・ショックに至るまで、何度となく暴落相場は発生してきた。それでも、やがて株価は回復し、高値を更新。多くの投資家は、このように何度でも立ち直ってきた米国株の底力を信じているからこそ、虎の子の資金を預ける気持ちになるのだろう。 しかし、こうした手放しの米国礼賛ムードに警鐘を鳴らす人もいる。不動産コンサルタントの長嶋修さんは、著書『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)の中で、「1950年代以降『世界の警察』を標榜し、『ドル覇権』を握り、世界のトップに君臨してきたように見える米国ですが、今後は没落の一途をたどるでしょう。一ローカル国家に転落です」と予言している。 不動産市場を分析するうえで欠かせない、国内外の政治経済、金融市場の情勢を長年ウォッチしてきた長嶋さんは、不動産コンサルタントという肩書ながら、その相場観の的確さに定評がある。そんな長嶋さんが米国の没落を危惧するのは、米国の国民の間に「決定的な分断」があるからだという。今なお人気のトランプ前大統領が、米国を“解体”する日 そもそも米国は“持てる者”が1%、残る99%が“持たざる者”と言われるほどの格差社会だ。犯罪件数は日本とは比べ物にならないほど多く、殺人事件の過半は銃によるもの。持たざる者が困窮する状況は政権が交代しても変わらず、いかに株価が上昇しようと、何もかかわりのない人々の間に鬱屈したムードがあるのは、日本と同じだ。 そのうえにさらなる分断をもたらしたのが、2020年の大統領選挙である。このとき、共和党のトランプ前大統領と民主党のバイデン現大統領が激突したことは記憶に新しいだろう。最終的に、多くの国民は「米国に民主主義を復活させること」を求めてバイデン政権を支持したが、この選挙は、両陣営の支持者の対立を決定的に深めることにつながった。 2021年1月には、トランプ前大統領の支持者によって、連邦議会議事堂が襲撃されるというセンセーショナルな事件が発生したが、それにもかかわらず、いまだ米国内でのトランプ人気は根強い。一方のバイデン政権は、当初の期待値が高かったせいもあるが、コロナ対策の失策や、インフレ加熱に国民生活が脅かされている影響などもあって、支持率が低下している。2022年の秋には、大統領選挙の中間選挙が予定されているが、ここで民主党の敗北――それも惨敗を予測する声も上がっている。そうなると、考え得るのがトランプ政権の復活だ。「トランプ前大統領の基本構想は『アメリカンファースト』ですが、これは突き詰めると、米国の従来型の体制――米ドルと金融、軍事による世界覇権――を打破すべく、米ドルや米軍を世界から引き上げて、一ローカル国家に戻るというもの。この構想の下に政治が断行されれば、米ドルは基軸通貨としての役割を終え、米軍は世界の警察として機能しなくなる可能性があります」(長嶋さん) そうなれば、米国の子分のような位置づけにある日本が多大な影響を受けるのはもちろんだが、世界の勢力図も激変するのは間違いない。 さらに、米国内においては「もともと共和党は中央政府を嫌っている。ですから、たとえば米国債などの負債はコロンビア特別区(ワシントンDC)に押し付け、フロリダ、アリゾナ州などを皮切りとした、分離・独立のような動きまで起きるかもしれません」(長嶋さん)。にわかには信じがたいかもしれないが、こうした米国の“解体”までもが、絵空事ではない、ということだ。相場に絶対はない。撤退の道筋を想定しておこう 二党対立にとどまらず、近年の米国では、社会主義的活動家や極右の過激派組織、アナーキストなども力をつけている。傍から見る以上に政治の内実は混沌としており、「どっちに転ぼうと安全」な状態とは言えない。“壊し屋”トランプが本領を発揮し、米国がこれまでのところでは想定できなかったレベルの変革を遂げたとき、株式市場の常識も破壊される可能性が高いだろう。これまでずっと乱高下を挟みつつも値上がりしてきた米国株が、ついに復調しなくなるシナリオも十分に考えられる。「米国が『アメリカンファースト』を実現し、一ローカル国に戻るとき、米国は真の意味での自由の国、アメリカンドリームを夢見ることができる国ではなくなるでしょう。これまでの米国には、世界中から優秀な人材が集まっていましたが、優秀な人ほど自分の生まれた国に帰るとか、より自由な国に移動するなどの動きも見られるはず。人材の流出とともに、資産も国外へと流出していきますから、そうなれば米国内は空洞化。この段階まで来れば、その後没落の一途をたどっていくことは目に見えています」(長嶋さん) 米国株投資家にとっては最悪のシナリオだが、投資をするうえではベストシナリオだけでなく、こうしたネガティブな情報も分析して、撤退の条件も整理しておくべきだ。すでに、連邦議会議事堂の襲撃といった、かつての米国では起こり得なかったような事態も発生しており、大変化の兆しは見えているとも言える。 目先(2022年)の米国株市場の動向について、多くの専門家は「利上げなどの影響による短期的な下落を挟みつつも、長期では上昇に向かう」と分析している。これを受けて、安くなったところで有望な米国の個別株を買う、せっせと米国株のインデックスファンドを積み立てる、といった行動をとる投資家も多いだろう。 それが間違いというわけではない。しかし、米国=成長著しい夢の国ではない、という認識の下、クラッシュに巻き込まれない手立ても同時に考える必要はある。たとえば、ほったらかしで値上がりを待つのをやめる。目標値を定めて、機械的に、こまめに利益確定するルールを課す。あるいは、現在の資産が米国に偏重しているなら、教科書的な理論に立ち戻って、一カ所に偏り過ぎないポートフォリオを組み直すのも有効だ。 もちろん、情報収集も必須になる。2022年2月21日には、トランプ前大統領が新しいSNSアプリ「トゥルース・ソーシャル」を開始した。ツイッターアカウントを永久停止されたトランプ前大統領のメッセージが、また日の目を見るようになる。まずはそんなところをチェックしてみるのもいいかもしれない。【プロフィール】長嶋修(ながしま・おさむ)/1967年、東京都生まれ。不動産コンサルタント、さくら事務所創業者・会長。不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買の業務全般を経験後、1999年にさくら事務所を設立。“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”の第一人者として活動する。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。2008年にはホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を目指し、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任する。メディア出演や講演、出版・執筆活動も精力的に手掛け、『100年マンション』『不動産格差』(日経新聞出版)など著書多数。2019年に始めたYouTubeチャンネル『長嶋修の不動産経済の展開を読む』(現在は『長嶋修の日本と世界を読む』 に改題)では、不動産だけではなく、国内外の政治経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。
2022.03.01 07:00
NEWSポストセブン
長嶋修氏
2022年の日経平均株価 下落要素も多いなか「4万円突破」を見込むワケ
 2022年の日本株市場は、初っ端から米国株の下落の影響を受けて、軟調な展開が続いた。米国では、コロナ・ショック後の株価上昇のけん引役となったハイテク株を中心に、急落する銘柄が続出。引き金を引いたのは、金融引き締めの加速への懸念。さらに、緊迫するウクライナ情勢や、新型コロナウイルス・オミクロン株の感染再拡大も影響したと見られる。 2月に入って一山超えた感があるものの、2022年は国内で夏に参議院選挙が予定されており、秋からは中国の共産党大会、米国の中間選挙と、世界的に重要な政治イベントが目白押しだ。専門家の間では、それらの影響、さらには前述した米国の金融引き締めに対する懸念などが相まって「日米の株式市場は乱高下が続く」という見方が主流になっている。 こうした状況下で、今後の投資方針を決めかねている個人投資家も多いだろう。軟調な相場が続いた後は、誰しも悲観的な心境になるものだ。しかし、『バブル再び 日経平均株価が4万円を超える日』(小学館新書)を上梓した不動産コンサルタント・長嶋修さんは「短期的な下落はあっても、原則として、日経平均株価はまだまだ上昇し続けるでしょう」と話す。 不動産市場を分析するうえで欠かせない、国内外の政治経済、金融市場の情勢を長年にわたってウォッチしてきた長嶋さんは、不動産コンサルタントという肩書ながら、取り扱う情報の質・量は金融畑のストラテジストやアナリストさながらだ。現に、2020年3月のコロナ・ショックで、日経平均株価が4週にわたって暴落し続けた総悲観のさ中でも、「株高」を予言(その後、予言は的中)するなど、その見立ては鋭い。そんな長嶋さんに、日経平均株価の大幅上昇を予測する理由を解説してもらった。「今世界では、コロナ禍による財政出動や金融緩和をきっかけとして、かつてないほどマネーの総量が膨れ上がっています。そのマネーが行き場を求めて、株や不動産、金・銀・プラチナ、美術品、あるいは仮想通貨やNFTアート(※ブロックチェーン技術を用いて唯一性を担保したデジタルアート)などに流れ込み、あらゆる資産価格の上昇――つまり“資産バブル”を引き起こすと考えられます」“持てる者”と“持たざる者”の格差が広がる 資産バブルとは、文字どおり資産――株や不動産などの実物資産から、仮想通貨などの新しい資産に至るまで――の価値が跳ね上がることだ。バブルというと、30年前のバブル景気のイメージから、好景気が連想されるかもしれない。通常、好景気になると消費や投資が伸び、企業の業績が上がって、給与所得者の給与が増加。そこからさらに消費が伸び、企業による投資なども伸びて、GDP(国内総生産)が上昇。その影響で、株価や不動産価格がますます伸びていく――といった好循環が作られる。 しかし、長嶋さんは「今後の資産バブルの局面においては、恐らくそのような状況にはならないでしょう」と話す。「1980年代半ば~1990年代初頭のバブル景気のときは、1985年のプラザ合意で為替が一気に円高・ドル安方向に進んだことを背景に、大規模な財政出動と金融緩和が実施されました。その結果が、未曽有のバブル景気だったわけですが、これは現在のコロナ・ショック⇒大規模な財政出動・金融緩和、という流れとよく似ています。いつの時代も、バブル発生の要因は“金余り”にあり、すでに資産バブル発生の土壌は整っています。ただ、今回あり余るマネーが流れ込む先は“資産”であり、給与所得者の給与が上がって、多くの人が景気回復実感を持つようになるとは考えにくい。資産価格が上昇⇒その含み益や売却益がさらなる投資を呼び、あらゆる資産の膨張が消費や投資に波及する、という流れになるはずです」 給与が上がらず、資産価格だけが上昇するということは、そういった資産を保有している層――主には富裕層や資産家層、高額所得者層だけが、恩恵を受ける形になるということだ。長嶋さんの著書のタイトルにあるように「日経平均株価が4万円を突破」と聞くと景気がいい話に聞こえるが、つまるところ資産バブルがもたらすのは“持てる者”と“持たざる者”の格差の拡大と言えるだろう。「実際、給与はこの30年で頭打ちどころかマイナスになっている感があります。それでも、資産価格は上がっていく。『株価は景気の先行指標』と言われますが、この定義は今の日本に当てはまらないのです」“持たざる者”はバブルの恩恵を受けず、給与すら減る可能性も 格差といえば、近年は日本の不動産市場においても、格差が急速に広がっている。長嶋さんいわく「一般に日経平均株価と不動産価格は連動性が高い」とのこと。しかし、対象の不動産が都心から離れれば離れるほど、その連動性は弱まっていく。昨今、日経平均株価に連動するようにして都心部の不動産価格は上昇しているが、郊外の不動産はゆっくり(あるいは立地によっては急激に)下落している。 バブル景気やリーマン・ショック前のプチバブルの際には、都心部の不動産価格上昇の後を追うように、郊外、地方都市の不動産も値上がりしてきた経緯がある。しかし、今やそうした動きは限定的であり、一部の不動産のみに資金が集中。“部分バブル”ともいうべき状況になっている。しかも、今後は外国資本の流入などで、さらにバブルが加速する可能性も高い。 これらの状況を踏まえて考えると、一部の有望な株や不動産などの資産を一定以上保有しない限り、“持たざる者”として格差の下限のほうへと沈んでいくリスクが高くなる。資産バブルの恩恵をまったく受けられないばかりでなく「IT・AI・ロボット化の進展で仕事が減り、給与も減る……といった事態も想定されます」と長嶋さんは指摘する。“持たざる者”から脱却するには、有望な資産を保有する、不良債権になり得る不動産があるなら手放す、働き方を見つめ直すなど、いくつかの手立てが考えられる。個人投資家であれば、もちろん株などの金融商品を買うのも一案だが、バブルといえどすべての銘柄が上昇するわけではないので、銘柄研究は必須だ。また、仮想通貨やNFTアートといった、新しい資産に対するアンテナを張ることも重要だろう。「バブルというからには、いつか突然に弾けて終わりが来ます。投資をするなら、撤退のシナリオも必ず思い描いておかなければなりません。技術革新によってビッグベンチャーが誕生し、株式市場の勢力図が塗り替えられる可能性も十二分にあるので、今強い株がずっと強いと思い込まないことも大切です」 コロナ禍で混沌とする今の時代、知識で荒波を乗り切っていけるように武装する必要がありそうだ。【プロフィール】長嶋修(ながしま・おさむ)/1967年、東京都生まれ。不動産コンサルタント、さくら事務所創業者・会長。不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買の業務全般を経験後、1999年にさくら事務所を設立。“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”の第一人者として活動する。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。2008年にはホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を目指し、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任する。メディア出演や講演、出版・執筆活動も精力的に手掛け、『100年マンション』『不動産格差』(日経新聞出版)など著書多数。2019年に始めたYouTubeチャンネル『長嶋修の不動産経済の展開を読む』(現在は『長嶋修の日本と世界を読む』 に改題)では、不動産だけではなく、国内外の政治経済、金融、歴史などについても解説。広範な知識と深い洞察に基づいた的確な見立てが注目を集めている。
2022.02.26 07:00
NEWSポストセブン
いたちごっこは長年、続いている。写真は2010年に東京・歌舞伎町のDVD販売店や倉庫などから押収したわいせつDVDなど(時事通信フォト
何度目かもわからない撲滅宣言が出た違法DVD販売、いったい誰が買っているのか
 この2年間のあいだ、新型コロナウイルスによって生活が激変させられたことで、様々なビジネスが大きな変化を強いられた。業績不振で路線変更を余儀なくされた仕事が多いなか、好景気に沸く分野もある。警察が何度目かの「最後の1店舗」宣言をしたDVD販売店摘発の報を受けたあと、いまだ円盤を求める客にどのように応じているのか、ライターの森鷹久氏がレポートする。 * * * 今年1月、わいせつなDVDを販売目的で所持していたとして、警視庁が東京・歌舞伎町の店舗を摘発。店舗(倉庫)番と客引き役の男ら2人が逮捕された。警視庁は昨年、歌舞伎町に残っていた最後の「1店舗」を摘発後に、こうしたDVD販売店を「一掃した」と自信を見せていたが、実はその後すぐ、客引きたちの姿が確認されていた。 コロナ禍前より筆者は周辺取材を続けているが、「最後」宣言を報じるのはいったい何回目になるだろうか。実は2017年の11月にも、当局関係者が店舗の「絶滅」を宣言していたが、2020年までに復活したことを記事にしている。当局関係者に聞くと、2000年代にも「一斉摘発して根絶」とされたことも何度かあるといい、つまるところ「いたちごっこ」は今に至るまで続いているということだ。「結局、根強いニーズに応える形の商売なんですね。コロナ禍で、それが際立った格好でしょう」 歌舞伎町で飲食店を経営する本田孝さん(仮名・40代)も、昨年の暮れ頃から、街頭に立つ怪しい雰囲気の男を何度も目撃していた。「男がぼーっと立ってるくらいなら歌舞伎町じゃ不自然には見えませんが、あいつらは鋭い眼光を通行人に向けて、近くを通れば『DVD』ってボソっと漏らす(笑)。以前はキャッチも初老の男性ばかりでしたが、最近は若い男もいた。コロナで仕事がなくなったんだろうけど、若いんだしもっと仕事選べよなと思いますよ」(本田さん) そんなキャッチについていくのは、10人中10人が高齢男性。コロナ禍以降で需要が伸びた、そう話すのは都内の成人向け書店スタッフだ。「今や、その手の映像はネット環境さえあれば、誰でも気軽に、しかもタダで見れてしまう。もちろんそれらのサイトの多くは違法アップロードなんでしょうけど。一方、パッケージのDVDや雑誌はほとんど売れない。では誰がDVDを買うのか、そりゃもうおじいさんばかり」(書店スタッフ) 高齢になればなるほど新しいテクノロジーを使いこなすのは難しくなり、慣れた環境を維持したがるものだ。そこに目をつけた一部の業者は、雑誌などに広告を出し「DVDとDVDデッキ」の抱き合わせ販売を十数年前から開始。デッキは、DVDを挿入しただけで自動的に再生される仕組みで、無駄なボタンや液晶画面などは一切ない。「自宅のパソコンでも視聴可能ですが、再生方法がわからない、万一DVDが詰まったりして家族にバレたらどうしよう。そんな不安を抱く方々、主に高齢者に歓迎されました。部屋のテレビにさっと繋いでこっそり見る。路上でDVDを買う客層も似ていますが、通販だと足が付く可能性もある。やはり路上で買う方が良いのです」(書店スタッフ) 冒頭で紹介した摘発事例で警視庁が「一掃した」と言っていたように、高齢者に歓迎されていたとはいえ、コロナ禍前には販売店も、キャッチの姿も見えなくなっていた。その後、コロナで自粛生活を強いらた人々からの需要が増えたというが、こっそり復活したキャッチや販売業者は、相変わらず路上に立ってはいるものの、摘発を恐れてかその営業スタイルには若干の変化が見られる。 かつては、路上でキャッチの誘いに乗ると、マンションや雑居ビルの一室に設けられた店舗に案内されるのが常で、カタログなどを見ながら好みのDVDを選ぶ方式だった。もしくは、キャッチに好みを伝えて、オーダーに応じたDVDをキャッチが持ってくる、そんなケースもあったが、相場の激変によって案内やオススメの仕方が大きく変わった。「以前はVHSテープ10本1万円などという価格設定でした。今では交渉次第でDVD20枚で5000円など、かなり安くなっているようですが、そのかわり客の好みは無視される。客引きのじいさんに捕まって『買う』というと、すぐに他の人間が紙袋などに入れたDVD20枚を持ってくる。枚数も多いし安いし、客も納得して持ち帰る」(書店スタッフ) このようにして販売されているDVDは、ほとんどが海賊版だ。一般に販売されている作品の違法ダビング、もしくは海外にサーバーを置く日本人向けの有料サイトにアップされていた映像をやはり勝手にダウンロードし、DVDに収録して販売している。DVD販売の仕組みを話してくれた書店スタッフは「安い」と言うが、そもそも制作費はタダ同然、権利者に報酬も払っていないのだから元手はほとんどかからないため、多少安く売ったとしても、ボロ儲けには変わらないのである。 筆者は今年、歌舞伎町のある通りでこうしたやりとりの一部始終を目撃したが、それはまるで違法薬物の路上取引の如く、スピーディーに行われていた。キャッチに近づいていった客の男性は、一言二言何かを告げると、周囲を伺いながら少し離れたところにあるコインパーキング敷地に身を隠す。まもなく、キャッチの男性のところに白い紙袋を持った別の男が近づいてくると、客も早足で近づき、おそらく現金と引き換えに紙袋を受け取る。この間わずか10分弱。キャッチも買う側も慣れたもの、という印象だが、キャッチから「ブツ」を受け取った男性を呼び止めると、最初は驚いた様子だったが、やがて妙に腰の低さを強調するようなニュアンスで、筆者にこう告げた。「コロナでどこにも行けないでしょう? ずっと在宅だし。こうやって買って、こっそり楽しんでるだけなんだから。お兄さんもわかるでしょ。ネット使えないからしょうがない。あんまり僕らのことをいじめるのをやめてよ」(男性) 男性はぱっと見、50歳そこそこという見た目。「パソコンが使えない老人」というには少々若すぎるようにも感じたが、身分証明書を見たわけではないので、見た目年齢が若いのかもしれない。コロナ禍以前は、新宿や池袋などを回り、好みの「ブツ」を物色して回っていたが、コロナ禍でそれが叶わなくなったと話す。「ほら、ドキドキ感もあるじゃない。あと、買って見るだけじゃ逮捕されることもないしね。これくらい許してよ、いじめないでよ」(男性) そういうと歩調を早め、地下鉄の入り口に消えていった。 使い方がよくわからないネットを使いその手の映像を視聴したものの、個人情報などが抜き取られたらどうしよう、不安が拭えないと言う高齢者は少なくない。そういう人はかなりのボリュームで存在しているので、よく報道されているような不正請求の被害に遭う危険を冒すより「安全に」鑑賞できる手段を、と考えてDVD鑑賞へのニーズは高まっていくだろう。次に当局が違法DVD販売店の「根絶」を宣言するのがいつかは知らないが、数十年続く「いたちごっこ」が終焉を迎える日は、とうぶんやってきそうにない。
2022.02.21 16:00
NEWSポストセブン
かつての王者、TBSラジオの凋落に歯止めはかかるか
「長年の王者」TBSラジオの苦戦 フジテレビと共通する“栄華の弊害”も
 長年の王者が凋落する共通点とは──。昨年6月の『首都圏ラジオ個人聴取率調査』で、20年ぶりに首位の座を追われたTBSラジオ。8月にはTOKYO FMと同率1位だったが、10月と12月には再び2位に下落した。ラジオ局関係者は「必然といえば必然」と淡々と振り返る。「2018年に三村孝成社長が就任してから『聴取率調査』週間を重視しなくなりました。ラジオ局はいつもその時期は“スペシャルウィーク”と銘打って、豪華なゲストを呼んだり、リスナーへのプレゼントをしたりします。TBSラジオはそれを辞めたんです。三村社長は、ラジオへの評価の基軸をradiko(ラジコ)などを使って番組への延べ接触人数がわかる『ラジオ365データ』に変えました」 TBSラジオは方向転換したが、他のラジオ局はいまだに『聴取率調査』週間に重きを置いている。「もちろん、他局もradikoなどの数字を重視していますよ。ただ、radikoではなくてラジオ本体で聞いている人もたくさんいる。特に昔からのラジオ好きや高齢者はそうでしょう。どちらのデータも併用すればいいのに、三村社長は『聴取率調査』を気にしない方針にした。うがった見方をすれば、トップから落ちることを予見していたのかもしれません。ちなみに、2021年度のradikoのユニークユーザー数では首都圏全局の中でニッポン放送が月間首位を何度も獲得しています」 TBSラジオは午前中は生島ヒロシ、森本毅郎、大沢悠里、午後は荒川強啓というパーソナリティが人気を保ってきた。しかし、盤石の体制のため、新たな番組を生めないというジレンマもあっただろう。「彼らの番組を立ち上げて人気番組にしていった社員は、いわゆる“ゼロイチ”の仕事をした。何もないところから、どうすれば他局に勝てるか考えて、試行錯誤をした。しかし、タイムテーブルが固定されて動かなくなってから入社した社員は、その流れに乗ればいいだけになる。ゼロから自分たちで番組を作るという経験を若いうちにあまりやることができなかった。その人たちが上の立場になった今、苦戦している状況です」人気があったゆえに陥るパラドックス テレビ業界に目を移せば、フジテレビは1980年代から30年近く栄華を誇っていたが、近年は視聴率争いで上位に顔を出せていない。テレビ局関係者は「人気企業になり過ぎた弊害が出た」と分析する。「フジは2010年前後に長年、人気番組を作ってきた腕のあるディレクターが退社したり、関連企業に出向したりして、どんどん現場からいなくなり、ノウハウが受け継がれなくなった。フジは豪華なタレントを集めて数字を取りに行くイメージがあったかもしれませんが、優秀な裏方がいたから、彼らの魅力を引き出せていた。企画や構成が見事だったんです。作り手が変わっていったことで、従来の人気番組の視聴率も下がっていき、『笑っていいとも!』や『めちゃ×2イケてるッ!』などの局を代表するコンテンツが終了していった」 数字が下がると、タレントのパワーダウンばかり指摘されるが、実際はスタッフの力量による部分も少なくない。「フジは1990年代に就職活動生の人気企業ランキングで1位になるなど、憧れのテレビ局だった。ただ、憧れが強すぎて就職してしまうと、憧れの企業で仕事できていることだけで満足してしまいがちだし、そうなると憧れの番組を超える番組を作るのはなかなか難しい。自分では大した番組を作っていないのに、フジの社員というだけで変にプライドを持ってしまう人も中にはいました」 両企業とも頂点を極め、人気があったゆえに陥ったパラドックスかもしれない。30年近く好調だったフジテレビはこの10年ほど結果を残せていない。TBSラジオも同じような運命を辿ってしまうのか。「大沢悠里さんの後を引き継いで、好調だった午前中の『伊集院光とらじおと』も3月で終わってしまいますし、ここ数年は迷走している印象です。ラジオの番組編成の定石として、夜22時以降の時間帯は若者に聞いてもらい、そのパーソナリティとリスナーの年齢が上がるにつれて、今度は午前のワイド番組、土曜や日曜の午後を任せるという方程式があった。ニッポン放送の三宅裕司、文化放送の吉田照美などがそうでしたし、伊集院もその1人だったと言っていいでしょう。『らじおと』後任のパンサーの向井慧はTBSラジオと今まで特に関わりはない。苦しい台所事情が窺えます。『聴取率調査』ではまだ2位ですが、ネットを見ると数字以上にリスナーの心が離れていっているように感じます」(前出・ラジオ関係者) ここからどう巻き返しを図るのか。
2022.02.17 16:00
NEWSポストセブン
地方紙には独自の戦略が?(イメージ)
地方紙で“ほっこり記事”が目立つ理由 記者削減で“紙面の穴埋め”の側面も
 Netflixの連続ドラマ『新聞記者』は、米倉涼子演じるエース記者が政府の公文書改竄事件を舞台に権力の闇に迫る物語だが、現在の新聞制作の現場はやや趣が異なるようだ。時間も費用もかかる調査報道に投入される記者は少なくなり、地方紙などでは読者との双方向の取り組みを深めて“サービスとしてのニュース”を充実させるところもある。 一方で、地方紙も全国紙と同様に部数が減少し、広告収入は大きく落ち込んで経営が厳しい。 それにともなって増えてきているのが、一般市民が人命救助などで貢献したとして警察署や消防署から表彰されたことを報じる“表彰記事“や記者が見聞きした身近な心温まるエピソードなどの“ほっこり記事“だ。「昔は新人が任される数十行のベタ記事だったが、コロナ禍もあり殺伐としたなかで明るい話、感動できる話が読みたいという声が根強く、いまでは新聞社が力を入れる強力コンテンツ。地方ネタでもネット配信でPV数を稼ぎますし、全国区の話題に発展することも。最近は状況を詳細に描写した記事や、表彰された市民に再現してもらった記事など熱の入れようがすごい」(地方紙記者) 評論家の渡邉哲也氏は別の事情もあると語る。「いわゆるほっこり記事が増えている理由の1つは紙面の穴埋めです。地方紙は経営が厳しく記者を減らしているが、第三種郵便の規定で広告は紙面の半分までと決まっているので、ページ数を減らせば広告スペースも減ってしまう。だから紙面を減らさないために穴埋め記事が必要なわけです。しかも、記者の数が減るなかで事件や事故を掘り下げる記事を増やそうとすれば裏取り取材に労力とコストがかかってしまう。その点、ほっこり記事は裏取りが楽。いい話を書かれてもクレームは来にくいですから」 経営難や記者のリストラで取材が楽な“ほっこり記事”や“表彰記事”、イベント参加記事が増えていく。地方紙の“タウン誌化”による苦肉の生き残り策といえそうだ。 元朝日新聞記者でメディア・ジャーナリズム論の平和博・桜美林大学教授は新聞の将来をこう予言する。「部数減少が日本より大きい米国の新聞社はいち早くデジタル化を進めたが、ネット広告収入に依存するビジネスモデルでは経営が成り立たなかった。デジタル広告市場の5割以上をグーグルとフェイスブック(メタ)に押さえられているからです。そこで、現在ではサブスク(課金)ビジネスに舵を切って、多角化も進めている。 ニューヨーク・タイムズは、主軸のニュースサイトだけではなく、料理のレシピからゲームまでオプションで提供。読者とコンテンツを増やすために1月にはスポーツ専門ニュースサイト『ジ・アスレチック』や『ワードル』というゲームサイトも買収し、サブスク読者は1000万人に到達した。日本の新聞社も経営体力があるうちに同様の取り組みをしなければという危機感を持っているはずです」「社会の木鐸」を標榜していた新聞が、ニュースからゲームまで売る“総合娯楽産業”に変質する。そうなったとき、ドラマのような「新聞記者」はもう生き残れない。※週刊ポスト2022年2月18・25日号
2022.02.17 07:00
週刊ポスト
異動先で待っていたのは…(イメージ)
大手新聞デジタル部門に異動した記者 50代でエクセル・パワポ講習の悲哀
 Netflixの連続ドラマ『新聞記者』は、米倉涼子演じるエース記者が政府の公文書改竄事件を舞台に権力の闇に迫る物語だが、当の新聞記者たちからは「いまどきあんな記者、いるわけないよ」とため息も聞こえてくる。 政治部や社会部の記者といえば、社旗をはためかせた黒塗りのハイヤーを使い、夜討ち朝駆け取材から“合コン”にまで乗り付けるという時代が長かった。現在は、「政治部の番記者や社会部のP担(検察担当)や遊軍はハイヤーを使えるが、台数が減らされているからある程度の必要性がないと使えない」(社会部記者)というが、デジタル部門に異動した中には“ハイヤー乗り放題”時代に現場を担当した50代の元デスククラスもいる。「異動するとエクセルやパワーポイントの使い方をいちから教わる『ビジネススキル講習』があったり、ウェブ解析士という資格を取らされたり。いかに記者に普通のサラリーマンのスキルがないかがわかってしまう。たまりかねて記者職に出戻った人もいます」(同前) デジタル事業とともに加速しているのがイベント事業だ。新聞社の収益の重要な柱となっている。「広告営業では新聞社のブランドを活かしてスポンサーを募り、イベントをどんどん増やしています。もちろん開催したイベントは記事化する。 SNSと同様に、読者との双方向に力を入れているため、様々な部署でオンラインイベントなどを乱立させています。上からやみくもに『イベントをやれ』と言われてスポンサーもないなか強行してパンクしたケースもあります」(元社会部記者) そうした新聞のデジタル化、読者との双方向化で取材の方法は根本的に変わってきた。「足でネタを拾う」のではなく、SNSを使って読者からネットの気になるネタなど「お題」(読みたいテーマ)を募ってから取材する。朝日の「withnews」や産経の「きっかけ取材班」などが知られる。 読者に取材テーマを求めるやり方で先行しているのは地方紙だ。 その先駆けが西日本新聞(本社・福岡市)が2018年にスタートさせた『あなたの特命取材班』だ。専用の投稿サイトやLINEなどで調査依頼を受け付け、記者が取材して記事にすることから「オンデマンド調査報道」とも呼ばれ、同社は現在、他の地方紙やテレビ局などのローカルメディア31媒体と協定を結び、記事を共有している。独自に始めた地方紙も多い。 元朝日新聞記者でメディア・ジャーナリズム論の平和博・桜美林大学教授が語る。「これまでの新聞報道はニュースを空からばらまくように一方通行で提供してきた。が、スマホが普及したネット社会では通用しません。何か事件や事故が起きた場合、現場に居合わせた中学生でも写真を撮影して配信したり、ツイートをしたりしただけでニュースを発信できる。新聞記者やカメラマンが後から現場に行っても太刀打ちできない。メディアと読者が同じ立場になっている。 そうしたメディア環境だからこそ、読者から暮らしの疑問、地域の困り事、行政・企業の不正告発まで情報提供や調査依頼を受け、新聞記者がプロの取材力で記事にするという、双方向の取り組みが意味を持ってくる。地域との結びつきが強い地方紙だからこの新しい“サービスとしてのニュース”が生まれてきた」 読者参加型の記事だけでなく、福井新聞では、社会部の記者4人が町おこしに参加し、その取り組みを連載している。※週刊ポスト2022年2月18・25日号
2022.02.16 07:00
週刊ポスト
新聞社の編集体制に変化?(イメージ)
新聞社で乱立するデジタル部門 実態は記者職の人件費削減との見方も
 Netflixの連続ドラマ『新聞記者』は、米倉涼子演じるエース記者が政府の公文書改竄事件を舞台に権力の闇に迫る物語だが、当の新聞記者たちからは「いまどきあんな記者、いるわけないよ」とため息も聞こえてくる。 新聞社の編集体制は様変わりした。朝日は昨年4月、編集局に「デジタル機動報道部」というガンダムのような響きの部を新設した。〈紙の新聞の部数が減っていくなか、デジタルでどう生き残っていくのか。報道機関としての役割を果たしていくために、なにをすればいいのか。デジタル機動報道部は、そんな目的のもと、2021年4月に発足したばかりの新しい部です〉 同社の社員募集サイトではそう説明している。 もともと、同社は2018年にDX(デジタル化)を掲げてバーティカルメディア(特定のテーマ、ジャンル、読者などに特化した記事サイト)を立ち上げる事業を進めてきた。それらは編集局とは別の「総合プロデュース室メディア開発チーム」(現メディアデザインセンター)が所管し、記者やデスク、出版部門の編集経験者など多くの社員が異動した。 さらに編集局の傘下にも、デジタル機動報道部の他に、コンテンツ編成本部(元「デジタル編集部」)もあり、デジタル部門が乱立している。 こうしたデジタル部門が、いまや新聞社の花形になろうとしている。記者からデジタル部門に異動した社員が語る。「確かに、紙に見切りをつけてなんとかデジタル戦略で盛り返したいと考えている記者は多い。ただ、現実としては、朝日の社員は記者職が最も給与水準が高い。 バーティカルメディアを立ち上げる際には、斜陽の紙媒体からデジタルで“もう一花咲かせよう”と異動を希望した社員もいたが、ネットに記事を書く仕事でも編集局から離れると記者職ではなくなるので月給は10万円近く減る。そのうえ最先端の仕事と思っていたのに、気づいたら広告記事ばかり書かされたり、毎日のSNSの更新に忙しかったりと環境ががらりと変わる。実態は記者職の人件費削減でしょう」※週刊ポスト2022年2月18・25日号
2022.02.15 07:00
週刊ポスト
ウェブサイト向け合同企業説明会に参加した採用担当者(イメージ、時事通信フォト)
コロナ禍の就活 オンライン化に非対応だと「志望度下がる」の声も
 コロナ禍が続き、大学生の生活が大きく変わった。大学の講義だけでなく、インターンシップから就職活動まで多くのものがオンライン化したのだ。オンラインで行われるインターンや就活は対面と何が違い、どちらの利便性が高いと考えられているのか。ネットの活用と問題点について詳しい成蹊大学客員教授でITジャーナリストの高橋暁子さんに聞いた。 * * *「対面は楽しい、でも忙しい」 新型コロナウイルスの影響で様々なことが延期や自粛、取りやめなどになり活動が停滞しがちな世の中だが、それでも大学生はやらねばならないことが山積みだ。筆者の勤務する大学の受講生たちも、講義やレポート、試験勉強、インターンシップ、就職活動などで日々忙しそうにしていた。2021年度は、前期は受講生が多く講義形式の講義だったため完全オンラインとなったが、後期は少人数の演習形式の講義だったため、対面で行った。 文部科学省は、新型コロナウイルス感染症対策を実施しつつ、学びの質の担保や学生同士、教員との交流などの意味から、遠隔での受講を希望する学生には対応すべきとしながらも、対面での実施も行うこととしている。そのため、コロナ禍初年度の2020年度はほとんど対面講義を実施しなかった大学も、2021年度は対面の割合を増やしているところが多いのだ。 2021年度が始まったとき、「2020年は大学に数回しか行っていない。これでは通信教育と同じ」という学生の声を聞いていた。なので、ほとんどの学生が対面で学べることを希望していると考えていた。「対面はやっぱり楽しい。ディスカッションも話しやすいし、同じグループのメンバーと仲良くなれて嬉しかった」 実際に受講生からは、このようにポジティブな反応もいくつももらった。しかし大学3年生から、こちらが想定していない彼らの事情も聞いて驚かされた。「インターンなどと重なると(講義を)休まなければならない。オンラインであれば出席できるので、取り入れてほしい」 オンラインならば、ネット接続できる環境を確保できればどこでも講義を受けられる。日付が重なっても時間が違えば、講義とインターンの両方に出席できるので学生にとって便利ということらしい。では、この利便性のために、大学生の誰もが何かにつけオンラインを志向しているのかというと、実際にはもう少し複雑だ。 オンライン講義を行っていた前期の間も、「対面講義を希望」という声は多かった。一方で、「オンラインのままのほうが都合がいい。対面になるとバイトなどの都合で参加できなくなってしまうので」という学生もいた。 いまの大学生はとても忙しい。前述のように、終始何かのタスクに追われている。アルバイトも、自分のお小遣いを増やすためではなく、学費や生活費を補うのに欠かせないという。勉学とアルバイトだけでも時間はなくなるのに、就職を見据えたインターンシップも欠かせない。どれも欠かせないので、おのずとハードスケジュールにならざるをえない。 確かにオンラインのみでは友だちもできず、大学生らしいキャンパスライフも送れないので不満を抱く。一方で、移動が要らないとか効率よく参加できるなどのオンラインのメリットも感じているというわけだ。これは大学の講義だけではなく、インターンや就活にもオンラインならではの利点が当てはまるようだ。「参加しやすいが雰囲気が分かりづらい」の声 そもそもインターンシップとは、学生が企業で仕事を体験する制度を指し、“就業体験”とも呼ばれる。仕事の内容ややりがいが感じられる体験型プログラムの場合もある。企業や業務内容について理解できたり、自己理解を深めるためにも必要とされる。 オンラインインターンシップとは、その名の通り、オンラインで実施されるインターンシップのことだ。就活生は、Zoomなどのオンライン会議システムやチャットツールなどを使って参加することが多い。 グループワークを行ったり、簡単な業務体験をしたり、社内会議に同席したり、社内見学や工場見学などを行うこともある。従来は対面式で行われていたが、コロナ禍で対面での実施が難しくなり、オンラインでの実施が進んでいるというわけだ。 2023年卒業予定の就職意向のある大学生を対象とした、リクルートの研究機関「就職みらい研究所」の「2023年卒 インターンシップ・就職活動準備に関する調査」(2021年11月)によると、インターンシップ・1day仕事体験プログラムの希望実施形態は、全体では対面実施希望が53.3ポイント、Web実施希望が29.1ポイントと対面希望の割合が高い。これは、前年と比べるとWeb実施希望が10ポイント程度の増加だ。 Webのみで参加経験がある学生や、対面・Webどちらも参加経験がある学生のWeb実施希望は前年に比べ約8ポイント増加しており、Web参加経験がある学生はよりWebでの実施を希望する傾向がある。「オンラインでは話しにくい」という声は多い。慣れた学生は自撮りライトで顔色を明るくしたり、美肌補正機能や化粧フィルターなどを取り入れたりしながら、オンラインコミュニケーションを重ねている。就活生同士のグループワークなども多いインターンシップの満足度は、このようなWebの経験の有無などにも大きく影響していそうだ。 オンラインが苦手な学生のためにサポート体制を整えたり、質問を受け付けたり、意見交換などをできる場を設けることで、不慣れな学生の満足度も上がるかもしれない。 就活生からは、「オンラインでも満足度の高い個人及びグループワークが展開されていて、学ぶことも多い」「オンラインでのインターンは時間が有効活用できて良い。一方、対面ではないので職場の雰囲気を感じにくい」「コロナで県をまたぐ移動がしにくく、都内で開催されるインターンシップにはほとんど参加できない」などの声があった。「熱意を伝えたい」と面接は対面希望 では、就活に対してはどのように感じているのだろうか。2023年春就職希望の大学生・大学院生会員を対象とした、キャリアパートナーズの「2023年卒ブンナビ学生アンケート調査<2021年12月>」によると、企業の採用でオンライン化が望ましいと思う部分について聞いたところ、「説明会」は昨対比7.7ポイント増の80.7%と圧倒的にオンライン希望が多くなった。「一次面接」は50.6%、「二次?最終面接前」29.9%、「最終面接」17.2%と、それぞれ昨対比14.3ポイント増、13.0ポイント増、6.9ポイント増となった。全体にオンラインを希望する割合が増加しているものの、面接段階、特に最終面接では対面を希望する割合が高くなることがわかる。最終面接では何が違うのか就活を控えた学生に聞いてみた。「第一志望の会社には、自分の熱意を対面で伝えたい。会社の雰囲気とか、働いている人たちの様子も見てみたい。オンラインではやはり表情とか身振りとかが見えづらく、うまく伝わらない気がする。絶対に対面を希望する」 友だちとの連絡はLINEで取り合うのが基本で、スマホやネットがない生活など想像も付かない世代である大学生たちも、熱意を伝えるということについては、リアルを志向するようだ。オンラインは便利だがコミュニケーションという意味ではリアルが圧倒的に上回ることをよく知っているからだろう。 もともと就活生の間では、交通費や宿泊費などの就活にかかるコストが非常に負担となっており、地方の学生は時間がとれず参加できないという例も多かった。ところがオンラインで開催するようになったことで、移動や宿泊の心配をせずとも参加できるようになり、エントリーの敷居が下がったというわけだ。これは企業側から見ても、遠方に住んでいる学生にもアピールできるメリットがあると考えられるのだ。コスパ重んじるこの世代ならではの意見 前出の2023年春就職希望の大学生・大学院生会員を対象とした調査によると、「企業の採用フローがコロナ対応(オンライン化)していない場合、志望度が下がる可能性があるか」について聞いたところ、「はい」49.7%、「いいえ」50.3%と意見が分かれる結果となった。オンライン化していないことで志望度が下がる学生が半数いることは、企業も重くとらえるべきだろう。調査結果で紹介されているコメントに、彼らの本音があらわれている。「第一志望でもない限り、そのような企業に足を運ぶのは費用対効果が少ない」は、いかにもコスパを重んじるこの世代ならではの意見だ。デフレで安売りが当たり前の世の中で育ち、ペイ(支払い)よりもリターン(儲け)を多くしなければと常に考えながら暮らしてきた人たちであれば、やむを得ない思考パターンともいえる。これは広く社会的な問題でもあるので、就職活動の何かを変更すれば解決するというものでもないだろう。 しかし、オンライン非対応であることが「前時代的」「将来的にも時代に柔軟に対応できなさそう」「社員の健康を軽んじている=大切にしてくれない可能性がある」と学生たちにうつっていることには、耳を傾ける価値があるのではないだろうか。 コロナ禍はまだ終わりそうにない中、学生たちは対面の良さを改めて感じつつも、オンラインのメリットも感じ、柔軟に対応し、デジタルツールも使いこなしている。一方で、仕事は基本的に対面ですすめるものなのだから、コロナ禍が明けたらオンラインの存在感は従属的なものになっていくはずと信じている働く大人は今も少なくない。だが、その利便性や効率、向いている場面などが共有されてきたいま、オンラインが完全になくなることはなさそうだ。すでにオンラインの向き不向きを把握して使い分けている学生たちのこのような柔軟さは、大人世代も見習うところがあるのではないだろうか。
2022.02.14 16:00
NEWSポストセブン
SNSを利用している記者も多い(イメージ)
新聞記者のタレント化進む 記者同士がSNSで批判し合う“内ゲバ”も発生
 ネット動画大手Netflixが世界同時配信中の連続ドラマ『新聞記者』は、米倉涼子演じるエース記者が政府の公文書改竄事件を舞台に権力の闇に迫る姿を演じて話題を集めている。だが、当の新聞記者たちからは「いまどきあんな記者、いるわけないよ」とため息が聞こえてくる──。 ネット時代になって紙面に目立つのが「署名記事」だ。かつては業界で「新聞記者は足で稼ぐ裏方、目立つタレント記者は邪道」といわれ、新聞の署名記事は海外支局の特派員電や編集委員の署名コラムなどに限られていたが、最近では一般記事も署名が多くなっている。これは“営業戦略”の変化だ。「良い記事だと思った読者が、書いた記者の名前を挙げてネットで感想を述べて拡散させたり、記者の名前で検索して他の担当記事を読む、ということが増えている。だから署名を載せる機会が多くなったところもあります。記者のSNSでの発信も、以前は炎上騒動が多いからとどの社も消極的だったが、最近は朝日、毎日、産経などは逆に推奨している。各社とも、名前で記事の信頼感や関心を高められる名物記者をもっと増やしたいと考えている」(大手紙記者) 社名で売れないなら、“タレント記者”を増産することで記事のPVを増やそうという戦略だ。 一番積極的なのが朝日。ホームページでは、〈朝日新聞社は、新たな発信や読者のみなさんとの対話をめざして、各部門、総局、取材チームなどのグループや、記者個人によるツイッター活用をすすめています。さまざまなテーマや取材拠点から、記事の裏話や紙面で紹介できなかった写真も掲載しているほか、さまざまな出来事の実況中継も試みています〉 と謳い、自社サイトにツイッターをやっている記者のリストを載せて、署名記事からその記者のツイッターに飛びやすくしている。 SNSで発信している大手紙記者の1人は、「SNSのプロフィールにメルアドを公表しているから、そこに自分が書いた記事に関連した情報提供が来るというメリットもある。誹謗中傷も来るが、それは無視するようにしています」と語る。 だが、記者同士が記事をめぐってSNSで批判し合うという“内ゲバ”も起きている。上司のデスクは「とにかく舌禍が多い」と渋い顔だ。「もともと記者には自己顕示欲の強い人が多いが、ツイッターで応援の声が届くようになると嬉しくなるのか、口が過ぎたり、ツイッターでアピールするために記事を書いているような本末転倒なことも。朝日では編集委員がツイッターで不適切な投稿をして広報が謝罪するなど何度か問題になっています」 記者のツイッターでの発信について、朝日新聞は「不適切な投稿があった場合は、所属長を含めた関係者で協議の上、個別に対応をしています。また、随時、研修で教訓を共有するなど、再発防止に努めています」(広報部)という。※週刊ポスト2022年2月18・25日号
2022.02.14 07:00
週刊ポスト

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