ライフ

アメリカでは「これが私の愚妻でして」と紹介してはいけない

 おぐにあやこ氏は1966年大阪生まれで元毎日新聞記者。夫の転勤を機に退社し、07年夏より夫、小学生の息子と共にワシントンDC郊外に住む。著書に『ベイビーパッカーでいこう!』『魂の声 リストカットの少女たち』。そのおぐに氏が明かす。
*****************************

 日本人駐在員の有名な失敗談に、「愚妻」発言というのがある。

 たとえば、あなたが上司の家に夫婦して招かれたとする。日本ならば「これが私の愚妻でして……」というのは立派な謙譲語だ。へりくだり、相手に敬意を示す表現といえる。あるいは同僚に「まいっちゃうよ。うちの愚妻がさぁ」なんてこぼしたら、「またカミサンのノロケかよ」と受け止められちゃうかも。つまり日本語の「愚妻」は謙譲語であり、時には妻自慢にすらなりうるのだ。

 だから生真面目な駐在員ほど、アメリカに来ても「愚妻」を英語に直訳し、「This is my stupid wife(これが私の愚かな妻でして)」なーんていってしまうらしい。

 でも、アメリカの妻同伴パーティでこんな発言をしたら、さあ、大変! 周囲のアメリカ人は「こ、こいつ何をいい出すんだ?」「そんなに夫婦仲が悪いのか」と表情をこわばらせるだろう。そして、あなたは将来にわたって、「abusive husband(虐待夫)」と陰口をたたかれ続けるのだ(もっとも、愚妻発言をした駐在員なんて、噂ばかりで実際には会ったことがない。都市伝説じゃないのかなぁ)。

 ならば、アメリカ人は妻を他人に、どう紹介するのだろう?

「これが僕の世界一素晴らしい妻です」とか「僕の最大の理解者です」とか、よくもまあ、そこまで人前で自分の妻をホメ倒せるなぁ、とこちらがあきれてしまうほど、歯の浮くような言葉で、ホメて、ホメて、ホメまくる。うらやましいのを通り越して、ちょっと不気味かも。

※週刊ポスト2010年10月15日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんが“奥様会”の写真に登場するたびに話題に(Instagram /時事通信フォト)
《ピチピチTシャツをデニムジャケットで覆って》大谷翔平の妻・真美子さん「奥様会」での活動を支える“元モデル先輩ママ” 横並びで笑顔を見せて
NEWSポストセブン
「全国障害者スポーツ大会」を観戦された秋篠宮家・次女の佳子さま(2025年10月26日、撮影/JMPA)
《注文が殺到》佳子さま、賛否を呼んだ“クッキリドレス”に合わせたイヤリングに…鮮やかな5万5000円ワンピで魅せたスタイリッシュなコーデ
NEWSポストセブン
クマによる被害が相次いでいる(左・イメージマート)
《男女4人死傷の“秋田殺人グマ”》被害者には「顔に大きく爪で抉られた痕跡」、「クラクションを鳴らしたら軽トラに突進」目撃者男性を襲った恐怖の一幕
NEWSポストセブン
遠藤
人気力士・遠藤の引退で「北陣」を襲名していた元・天鎧鵬が退職 認められないはずの年寄名跡“借株”が残存し、大物引退のたびに玉突きで名跡がコロコロ変わる珍現象が多発
NEWSポストセブン
本拠地で大活躍を見せた大谷翔平と、妻の真美子さん
《スイートルームを指差して…》大谷翔平がホームラン後に見せた“真美子さんポーズ”「妻が見に来てるんだ」周囲に明かす“等身大でいられる関係”
NEWSポストセブン
相撲協会と白鵬氏の緊張関係は新たなステージに突入
「伝統を前面に打ち出す相撲協会」と「ガチンコ競技化の白鵬」大相撲ロンドン公演で浮き彫りになった両者の隔たり “格闘技”なのか“儀式”なのか…問われる相撲のあり方
週刊ポスト
部下と“ラブホ密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(左・時事通信フォト)
《「策士」との評価も》“ラブホ通いすぎ”小川晶・前橋市長がXのコメント欄を開放 続投するプラス材料に?本当の狙いとは
NEWSポストセブン
女性初の首相として新任会見に臨んだ高市氏(2025年10月写真撮影:小川裕夫)
《維新の消滅確率は90%?》高市早苗内閣発足、保守の受け皿として支持集めた政党は生き残れるのか? 存在意義が問われる維新の会や参政党
NEWSポストセブン
滋賀県を訪問された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年10月25日、撮影/JMPA)
《すぐに売り切れ》佳子さま、6万9300円のミントグリーンのワンピースに信楽焼イヤリングを合わせてさわやかなコーデ スカーフを背中で結ばれ、ガーリーに
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
《安倍晋三元首相銃撃事件・初公判》「犯人の知的レベルの高さ」を鈴木エイト氏が証言、ポイントは「親族への尋問」…山上徹也被告の弁護側は「統一教会のせいで一家崩壊」主張の見通し
NEWSポストセブン
女優・八千草薫さんの自宅が取り壊されていることがわかった
《女優・八千草薫の取り壊された3億円豪邸の今》「亡き夫との庭を遺してほしい」医者から余命宣告に死の直前まで奔走した土地の現状
NEWSポストセブン
左から六代目山口組・司忍組長、六代目山口組・高山清司相談役/時事通信フォト、共同通信社)
「六代目山口組で敵う人はいない」司忍組長以上とも言われる高山清司相談役の“権力” 私生活は「100坪豪邸で動画配信サービス視聴」も
NEWSポストセブン