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ダメ社員は「心の安定化装置」として会社を救う可能性がある

「自分はダメ社員だと思って落ち込んできたけど、自分にも存在意義があるんだと思えた」(30代会社員)

 そんな読者の共感(?)を得てか、最近話題を呼んでいるのが『働かないアリに意義がある』(メディアファクトリー新書)という本。進化生物学者によるアリの研究の話なのだが、それを自分や自分の会社に重ねては、つい納得してしまう人も多いのだという。

 著者の長谷川英祐・北海道大学大学院准教授がいう。「アリとキリギリスの童話の影響からか、アリには働き者のイメージがありますが、実は巣のなかの7割ほどの働きアリは“何もしていない”。さらに1割は一生働かないことが、これまでの研究で明らかになっているんです」

 よく「2:8の法則」とか「パレートの法則」などと呼ばれるが、「よく働くのは全体の2割だけ」というのはアリの世界でも同じというわけだ。

 そしてこの本のキモは、その怠け者たちが、実は集団を維持するために必要な存在だという点。

「働いていたアリが疲労して仕事が処理しきれなくなると、いままで働かなかったアリが働きだす。こうしていつも誰かが働き続けることでコロニーを長期間にわたって維持できるのです」(長谷川氏)

 みんながいっせいに働くシステムでは、全員が同時に疲れてしまうため、誰も働けなくなる時間が生じてしまい、それが組織にとって致命傷になる。そうしたリスクを避けるメカニズムとして、働く者と休んでいる者がいるというのだ。

 日本経営合理化協会常任理事で主席コンサルタントの作間信司氏は、この本の内容は実際のビジネスにもあてはまるという。

「例えばAさんが病気で休んだために、Bさんがその仕事を任されたとすると、それがBさんのストライクゾーンであれば思わぬ才能を発揮する。それが優れた会社のシステムです。人はひとたび危機が起こり、スイッチが入ると、もともと備わっていた潜在能力を発揮できるもの。それをうまくいかせるのがよい会社なのです」

 そして1割いるという“ダメ社員”についても、作間氏は存在意義を認める。「会社のなかにもどうしようもない人が1割いるのは確か。でもこの人たちがいることで、他の社員が苦しいと思ったときに“自分もキツいけど、下にはもっとキツい人がいる”と思うことができ、心の平静が保たれる。いわば心のスタビライザー(安定化装置)的な役割です」(作間さん)

 あなたの会社を救うのは、あのダメ社員? それともあなた?

※週刊ポスト2011年6月24日号

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