ビジネス

投資先は安定した先進国 米国経済はやはり強いと藤巻健史氏

現在は史上空前の円高状態だが、本来ならば、20年もGDPが低迷している日本に投資が集中するなど市場原理が発達している国では信じられないと投資アドバイザーの藤巻健史氏は言う。現在の円高トレンドの大きな要因は「為替リスクを恐れるあまり、資金が日本国内に留まり、外に出て行かない」からだという。史上空前の円高時代にどうやって資産を守るか、藤巻氏が解説する。

* * *
私は、円の資産を、外貨建ての資産に移すことを強く勧めます。現在、外貨建ては、日本の銀行や証券会社で簡単に手続きできます。

実際、私も、金融資産は9割を外貨建てにしています。外貨建てMMF(外国の安全性の高い優良企業の社債や外国国債を中心に運用する投資信託)を米株中心に、複数の金融商品に分散しています。

「外貨」というと、高金利のブラジルのレアルや、切り上げ期待が大きい中国の人民元などBRICsをはじめとする新興国に人気が集まっていますが、私は疑問に思います。

余裕があれば、投資しても構いませんが、あくまで余剰資金で投資すべきです。流動性リスクもあります。

今の時期は、「守り」に徹すべきです。増やすための「攻め」ならば、BRICs勝負もアリですが、日本沈没の前に資産を逃がすのが第一の目的ですから、積極的に儲ける必要はありません。まずは、このままだと資産価値が20%にまで減ってしまうリスクを、80%にとどめるにはどうしたらいいか、を考えるべきなのです。

だとすれば投資先は、安定した先進国しかありません。アメリカを中心に、スイスやオーストラリアなどに分散すべきでしょう。

なぜ経済が悪化しているアメリカに? と疑問に思われるかもしれません。しかし決して弱くはありません。アメリカ経済はやはり「強い」のです。株価で見てみましょう。

アメリカのニューヨーク株式相場では、リーマン・ショック前の2007年7月、ダウ工業株30 種平均が、終値で初めて1万4000ドルの大台に乗りました。同じ時期、日経平均株価は、1万7200円です。

では、その後のリーマン・ショックを経て、どうなったでしょうか。

2011年9月の時点で、アメリカのダウ工業株30種平均は、1万1000ドルです。一方、日経平均株価は、8700円です。

アメリカが20%減でとどまっているのに対し、日本はほぼ半減しています。これだけ見ても、どちらの国の経済が「強い」のか、おわかりでしょう。

実際、アメリカの財政規律は、日本に比べても非常に厳格ですし、成熟した先進国であるにもかかわらず、過去10年間でGDPが1.5倍に成長しています。ユーロ圏が金融危機に見舞われる中、「安心」できる国の筆頭候補がアメリカであることがわかるかと思います。

繰り返しになりますが、今、日本のサラリーマンに必要なことは「資産運用」ではありません。「資産防衛」なのです。資産を外貨建てにすることは、たとえるなら保険に入るようなものです。したがって投資先は、利益率ではなく、「安心」を基準にして選ぶべきなのです。保険会社の選び方と、まったく同じだと考えてください。

近い将来、日本の財政が破綻することはほぼ確実な状況です。それが3年先なのか、10年先なのか、それはわかりません。

しかし破綻することがわかっているのに、手をこまねいているのは、どうでしょうか。

これだけいっても、「さらに円高が進むのではないか。だから外貨建ては損をする」という人がいます。

内向きの投資を続けてきた日本人のメンタリティには、為替差損が発生するということは、どうしても許せないようです。

しかし、考えてみてください。仮に1ドル=75円の時点でドルを購入したとして、その後、1ドル=60円になったとしても、損失は2割。ハイパーインフレに備えての保険料だと思えば、高くはありません。円が大暴落したら2割どころでは済まないのですから。

日本経済がぐしゃっと潰れた時に、手元に残る資産が、現在の資産の80%なのか、ゼロになってしまうのか。そういう選択を今、迫られているのです

※『サラリーマンのための安心税金読本』(小学館)より

関連キーワード

関連記事

トピックス

離婚を発表した加藤ローサと松井大輔(右/Instagramより)
「ママがやってよ」が嫌いな言葉…加藤ローサ(40)、夫・松井大輔氏(44)に尽くし続けた背景に母が伝えていた“人生失敗の3大要素”
NEWSポストセブン
二階堂ふみとメイプル超合金・カズレーザーが結婚
二階堂ふみ&カズレーザーは“推し婚”ではなく“押し婚”、山田美保子さんが分析 沖縄県出身女性芸能人との共通点も
女性セブン
山下美夢有(左)の弟・勝将は昨年の男子プロテストを通過
《山下美夢有が全英女子オープンで初優勝》弟・勝将は男子ゴルフ界のホープで “姉以上”の期待度 「身長162cmと小柄だが海外勢にもパワー負けしていない」の評価
週刊ポスト
2013年に音楽ユニット「girl next door」の千紗と結婚した結婚した北島康介
《金メダリスト・北島康介に不倫報道》「店内でも暗黙のウワサに…」 “小芝風花似”ホステスと逢瀬を重ねた“銀座の高級老舗クラブ”の正体「超一流が集まるお堅い店」
NEWSポストセブン
京都成章打線を相手にノーヒットノーランを達成した横浜・松坂大輔
【1998年夏の甲子園決勝】横浜・松坂大輔と投げ合った京都成章・古岡基紀 全試合完投の偉業でも「松坂は同じ星に生まれた投手とは思えなかった」
週刊ポスト
お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志と浜田雅功
《松本人志が11月復帰へ》「ダウンタウンチャンネル(仮称)」配信日が決定 “今春スタート予定”が大幅に遅れた事情
NEWSポストセブン
“新庄采配”には戦略的な狙いがあるという
【実は頭脳派だった】日本ハム・新庄監督、日本球界の常識を覆す“完投主義”の戦略的な狙い 休ませながらの起用で今季は長期離脱者ゼロの実績も
週刊ポスト
夏レジャーを普通に楽しんでほしいのが地域住民の願い(イメージ)
《各地の海辺が”行為”のための出会いの場に》近隣住民「男性同士で雑木林を分け行って…」 「本当に困ってんの、こっちは」ドローンで盗撮しようとする悪趣味な人たちも出現
NEWSポストセブン
2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《北島康介に不倫報道》元ガルネク・千紗、直近は「マスク姿で元気がなさそう…」スイミングスクールの保護者が目撃
NEWSポストセブン
娘たちとの関係に悩まれる紀子さま(2025年6月、東京・港区。撮影/JMPA)
《眞子さんは出席拒否の見込み》紀子さま、悠仁さま成年式を控えて深まる憂慮 寄り添い合う雅子さまと愛子さまの姿に“焦り”が募る状況、“30度”への違和感指摘する声も
女性セブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者が逮捕された
「ローションに溶かして…」レーサム元会長が法廷で語った“薬物漬けパーティー”のきっかけ「ホテルに呼んだ女性に勧められた」【懲役2年、執行猶予4年】
NEWSポストセブン
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
「なぜ熊を殺した」「行くのが間違い」役場に抗議100件…地元猟友会は「人を襲うのは稀」も対策を求める《羅臼岳ヒグマ死亡事故》
NEWSポストセブン